研究課題/領域番号 |
23380056
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧 正敏 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40183610)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ALG-2 / 結合モチーフ / 結晶構造 / タンパク質間相互作用 / 細胞質顆粒 / 核内スペックル / スプライシング / カルシウム結合タンパク質 |
研究概要 |
(1)ALG-2の相互作用因子であるPLSCR3が細胞外にエクソソームと称される膜小胞に含まれた状態で分泌される仕組みを明らかにした。この分泌はセラミド合成阻害剤やパルミトイル化阻害剤添加によって抑制された。エンドソーム選別輸送複合体(ESCRT)の機能を阻害するVPS4Bの優勢機能抑制変異体の過剰発現により細胞外分泌が抑制され、多胞性エンドソームに蓄積した。PLSCR3は多胞性エンドソームが形質膜と融合し、その内部小胞が細胞外に放出されて分泌されると思われる。ALG-2結合部位の欠損変異体でも分泌されることより、ALG-2のPLSCR3への結合が直接分泌に作用する可能性は低い。2)ALG-2結合モチーフには少なくとも2種類あり、I型については結晶構造により既に分子認識機構を解明していた。II型についてPLSCR3由来ペプチドとの共結晶化は不成功であったが、結合部位のシミュレーションおよび変異体解析より、結合部位を推定した。また、Sec31A由来ペプチドとの共結晶化に成功し、構造の一端を解明することができ、I型とは異なる部位に結合することが判明した。今後は詳細な変異体解析が必要である。(3)ALG-2と相互作用する新規タンパク質としてPATL1ならびにCHERPを同定した。PATL1は細胞質においてmRNAの分解、翻訳抑制を行うことが知られており、P-bodyという非膜性の構造物を形成するが、それぞれの特異抗体を調製することにより、ALG-2も一部がP-bodyに斑点状に存在することを蛍光顕微鏡観察による細胞内局在解析により明らかにした。CHERPはSer/Argに富むSRタンパク質ファミリーに属すこと、核内でSC35やSF3A2と同様に核スペックルとして存在することが判明し、pre-mRNAのスプライシングに関与していることが示唆された。さらに、新規ALG-2相互作用因子としてESCRTシステムで機能するIST1とVPS37を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構造生物学的研究においては、年度内に結晶構造を完全解明する予定であったが、当初、共結晶化に失敗したがタンパク質の精製条件ならびにペプチドの残基数を変えることにより結晶化に成功した。データ取得が遅れたため、構造の精密化が遅れ、さらに変異体解析などに遅れが生じているが、共結晶が得られたことは非常に大きな成果である。新規相互作用タンパク質探索についてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
構造生物学的解析は、データ取得が遅れたため、構造の精密化が遅れ、さらに変異体解析などに遅れが生じているが、共結晶が得られたことは非常に大きな成果であり、今後の展開は当初計画通りに遂行可能である。また、新規相互作用タンパク質CHERPとALG-2の核内局在に及ぼすカルシウムの影響を検討するため、蛍光顕微鏡を用いた生細胞イメージング観察を行う必要があり、蛍光タンパク質融合発現プラスミドを構築する必要がある。また、選択的スプライシングにおよぼす影響を解析するための評価系の確立が必要である。
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