研究課題
真核生物においてmRNAは核内で転写された後、様々なmRNAプロセシングを受けて成熟mRNAとなる。mRNAプロセシング間の共役は、共役因子と呼ばれるタンパク質複合体が制御している。TREX複合体はmRNAのスプライシングと核外輸送を共役する機能を持つ共役因子であり、その構成因子UAP56は進化的に保存されている。UAP56には、ヒトやマウスなどのほ乳類では90%の相同性を持つURH49が存在する。我々は、UAP56とURH49がそれぞれ異なる複合体TREXならびにAREXを形成すること、さらにそれぞれの複合体を通して異なる生理機能を担っていることを明らかにしてきた。しかし非常に相同性の高い両者が形成する複合体の構築原理は全く分かっておらず、両者の機能の違い、複合体形成の違いを決定する領域を同定し、複合体形成の違いに起因する機能の違いを分子のレベルで明らかにすることを目的としている。まずUAP56とURH49で比較的異なる末端配列を欠損させた欠損変異体と、末端配列を入れ替えたキメラ変異体を作成した。加えてコア領域についても、両者で異なるアミノ酸を1残基ずつ入れ替えたキメラ変異体を作成した。これらの変異体に対して免疫沈降法、RNA-FISH法を用いる事によって複合体形成能と細胞内機能を検証し、UAP56とURH49の違いを決定する領域の同定を試みた。末端欠損変異体の解析から、UAP56とURH49のいずれの欠損変異体においても、TREXあるいはAREX複合体形成能が低下することを観察した。一方で末端のキメラ変異体は、いずれも元のUAP56あるいはURH49と同じ複合体形成能を示した。細胞内機能についても同様の結果であった。これらの結果からTREX,AREX複合体形成においてUAP56やURH49の末端領域は重要であるが、複合体形成の違いを制御している領域は他に存在している可能性が示唆された。そこでコア領域を入れ替えたキメラ変異体について細胞内機能を検証した結果、いくつかのURH49変異体がUAP56と同様の機能を持つ可能性が示唆された。これら変異体の複合体形成能について現在検証している。
2: おおむね順調に進展している
UAP56とURH49が異なる複合体を形成するために必要な領域について解析を行った。そのために必要なアッセイ系を構築し、異なる複合体を形成するために重要な領域を解析した。その結果、必要な領域を同定しつつある。すなわち24年度以降の解析により、その領域を同定し、分子機構を解明する足がかりを得ている。
これら両者が形成する複合体の形成機構は、タンパク質複合体の構築原理の理解にとって重要な知見となる。よってこの解析に力を注ぐことにしている。加えて、URH49の構成する新規複合体構成因子についても解析を進めていく。
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化学と生物
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http://www.jsbba.or.jp/pub/journal_kasei/
J. Biotechnol
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10.1016/j.jbiotec.2011.03.024