研究課題
基盤研究(B)
必須微量元素であるセレンは、同族の硫黄、酸素と生体内で厳密に区別され、特定のタンパク質(セレンタンパク質)の特定の位置にセレノシステイン残基の形で機能発現に必須の要素として取り込まれ、種々の重要な生理的役割を果たしている。セレンの量を遥かに上回る硫黄豊富な生体内環境下で、様々な因子が構造と機能に基づいた緻密な選択的反応を遂行することにより、セレンが特異的に転移・代謝され、セレンタンパク質の生合成を恙なく進行させていると考えられる。本研究では、セレンの活性化と転移を触媒する酵素の解析を行うとともに、セレン転移に関与する因子の探索を行うことを目的とした。セレノシステインリアーゼからセレノリン酸シンテターゼへのセレン転移反応過程において、セレニドあるいはシステインペルセレニドの関与が考えられたことから、まずは、細胞内でセレニドの生成に関与するセレン酸・亜セレン酸還元酵素について解析を行った。土壌から単離された6種類のBacillus属細菌を5mMセレン酸または亜セレン酸を含むTSA培地で好気的条件下で培養した結果、NTB-1株ではセレン酸、亜セレン酸含有培地共に菌体が赤色を呈しセレンの蓄積が認められた。一方、それ以外の5種の菌では亜セレン酸を含む培地でのみセレンの蓄積が確認された。(亜)セレン酸還元活性の細胞内局在を調べるため、菌体を超音波破砕し、電子供与体として還元型ベンジルビオロジェンを加えて活性を調べたところ、全ての菌において不溶性画分に活性があることが分かり、(亜)セレン酸還元酵素は膜結合型タンパク質であることが示唆された。また、MHSEPの構造機能解明を目指し、G.sulfurreducensから本タンパク質の精製を試みた。17mM硫黄含有培地27Lで約40時間培養した後に集菌し冷凍保存したG.sulfurreducens(約27.3g)を超音波破砕した。1.75M硫安分画上清をButyl-Toyopearl、Q-Sepharoseカラムを供して精製を行った結果、およそ138μgのMHSEPを得た。
2: おおむね順調に進展している
セレニドの生成に関与する酵素の同定はセレノリン酸シンテターゼの基質を解明する上で必須であり、本酵素解明の基盤を構築できたことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
今後、亜セレン酸、セレン酸、セレノシステインの3つの化学形態からのセレニド供給系について個別に詳細な解析を進める方策である。特に、今回見出した亜セレン酸・セレン酸還元酵素の構造と機能を明らかにするとともに、セレン耐性微生物を対象としたセレンタンパク質生合成装置の解明にも着手する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
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