研究課題
本研究では、 Pseudomonas sp. F2a 株由来セレノリン酸合成酵素のカイネティクス解析および大腸菌欠損株を用いたインビボ試験による基質供給源の同定を行った。Pseudomonas sp. F2a セレノリン酸合成酵素をコードする遺伝子 selD を pColdI に組み込み、pColdI_F2a_selD を作製した。これを E. coli BL21(DE3) に導入し、発現したHis-tag 融合タンパク質を Ni-NTA カラムを用いて精製した。本酵素の活性は好熱菌由来ピルビン酸リン酸ジキナーゼ (PPDK) と乳酸脱水素酵素 (LDH) を用いた共役アッセイ法により測定した。ジチオスレイトール (DTT) を用いて合成したセレニドに対する Km 値は 15.7 microM、F2a チオレドキシンを用いた場合は 8.47 microM となった。また、還元型グルタチオン (GSH) や β-メルカプトエタノールを用いた場合は反応が圧倒的に遅く、測定が困難であった。このことから、DTT やチオレドキシンのような分子内に二つのチオール基を持つ還元分子が効率よくセレノリン酸合成酵素へ基質を供給していることが明らかとなった。また、E. coli のセレンタンパク質であるギ酸脱水素酵素活性を指標としてセレンタンパク質合成に関与する遺伝子の探索を行った。E. coli の一遺伝子欠損株コレクションに対するギ酸脱水素酵素活性を評価した結果、trxA の欠損株において活性の低下が見られた。trxA はチオレドキシンをコードしているため、チオレドキシンがセレンタンパク質生合成に関与している可能性が示唆された。また、グルタチオン合成酵素をコードする gshB の欠損株においては活性の低下が見られなかった。以上より、インビボ (カイネティクス) の結果とインビトロの結果から GSH ではなくチオレドキシンがセレンタンパク質合成に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度当初の計画中に、セレンタンパク質生合成装置として機能するタンパク質巨大複合体の同定が含まれていたが、本複合体の同定には技術的な課題がいくつか残っており、未だ解析に至っていない。この点においては課題があるものの、全体としては概ね順調に進展している。ここ最近の予備的実験から解決の糸口が見つかってきているので、今後の研究の進展が期待される。
上記の現在までの達成度でも述べたように、セレンタンパク質生合成装置として機能するタンパク質巨大複合体の同定が今後の大きな解明のポイントになる。最近の予備的実験より解決の糸口が見つかってきたので、今後は、着実に研究を進め、セレンタンパク質生合成装置の全貌を明らかにする方針である。
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Biosci Biotechnol Biochem
巻: 78 ページ: 1376-1380
10.1080/09168451.2014.918487