研究課題
本研究においては、高温ストレスに対するバラの生理的適応機構をバラ花弁における季節・栽培環境変化に応答した主要香気成分2-フェニルエタノール(2PE)の生合成経路シフト、新生合成経路に焦点を絞り以下の各課題について検討した。1)安定同位体標識前駆体・代謝物消長解析に基づく生合成経路シフトと新生合成経路の解明。2)生合成酵素反応・遺伝子発現の解析に基づく、生合成経路のシフトと新生合成経路の詳細の解明。3)質量顕微鏡による生合成中間体の花弁表層細胞における移動・推移の可視化の達成。1)重水素標識L-フェニルアラニン(L-Phe)から生成する2PEにおけるアイソトポローグの比率を基に生合成経路を推定したところ、夏期、冬期それぞれにおいて季節により2PEの主要な生合成経路が異なることを確認できた(論文投稿中)。2)2PEの新たな生合成経路に関わる酵素としてL-フェニルアラニンの芳香族アミノ酸アミノ基転移酵素:AAATおよび、ピルビン酸脱炭酸酵素:PDCを解明し、それらの遺伝子のクローニングにも成功した。また、RNAi実験により、2PE生合成における季節間で酵素の役割の相違も解明した。各酵素、遺伝子の機能も解明した(J.Plant Physiol.2012掲載;論文投稿中)。3)バラ花弁の凍結切片を作製し、質量顕微鏡分析に供した。その結果、2PE配糖体の検出に成功したものの、細胞サイズに比較してイオン化に必要なマトリックスの粒子径が十分小さくできなかったため、花弁内での局在を解明には至らなかった。上記以外に、阻害剤を用いた新規生合成系の解析に必要な標識体、阻害剤の合成に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
課題1)での結果を踏まえ、課題2)の検討の結果、当初の目標である酵素の解明については計画通りに進捗した.課題3)の検討については機器の本質に関わる問題に起因しており、問題点を初年度に明らかにできた。上記課題以外にも阻害剤を用いた新規生合成系の解析に必要な標識体、阻害剤の合成に成功するなど、当初の計画以上に研究が進展している。
課題2)における環境要因の解明については現在利用しているプロトプラストに加え、アグロバクテリウムによる目的遺伝子の一過的抑制実験をインタクトな植物もしくは切り花での実験系を立ち上げる。課題3)の質量顕微鏡による実験は機器の精度が要因であるため、本検討はしばらく見合わせる。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (3件)
J.Plant Physiol.
巻: 169 ページ: 444-451
doi:10.1016/j.jplph.2011.12.005
Acta Biochim.Pol
巻: 59(Free Article) ページ: 79-81
J.Sep.Sci.
巻: 34 ページ: 2759-2764
doi:10.1002/jssc.201100508
http://www.agr.shizuoka.ac.jp/abc/npchem/index_en.html
http://www.agr.shizuoka.ac.jp/abc/npchem/index.html
http://www.agr.shizuoka.ac.jp/c/npchem/index.html