研究課題/領域番号 |
23380064
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三芳 秀人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20190829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 複合体-I / ミトコンドリア / 阻害剤 / 光親和性標識 |
研究概要 |
呼吸鎖酵素複合体-I(NADH-キノン酸化還元酵素)のプロトン輸送メカニズムを理解する上で、膜ドメインの機能を明らかにすることは必須である。Sazanovグループによって2012年および2013年に報告された好熱細菌複合体-Iの結晶構造に基づいて、酵素の親水性ドメインでの酸化還元反応が駆動力となって膜ドメインに構造変化が誘導され、これに伴ってプロトンがポンプされると考える仮説が急浮上してきた。このモデルの真偽を確かめるためには、予想される膜ドメインの動きを直視することが重要である。そこで24年度は、1分子観察によって膜ドメインの動きを観測することを実現するために、蛍光プローブを膜ドメインの位置特異的に置換する技術を確立することを目指して研究を行った。 具体的には、複合体-Iの鍵サブユニットであるND1に特異的に結合することがわかっている阻害剤アセトゲニンに蛍光プローブを組み込み、トシル・ケミストリーの原理を用いてND1に蛍光プローブを置換させることを計画した。アセトゲニン類に関するこれまでの構造活性相関研究から、アルキル側鎖は活性発現に重要ではないことが判明しているため、アルキル側鎖にトシルエステルを導入する合成研究を行った。トシル基にはアルキン(三重結合)を接続しておき、酵素の求核性アミノ酸残基にアルキンを直接結合させることとした。トシル・ケミストリーによって酵素にアルキンを導入できれば、このアルキンを反応の足場にして、続くクリック・ケミストリーで蛍光プローブの導入が可能になる。合成はほぼ計画通りに推進でき、合成目標としたアセトゲニンを得る見通しが立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセトゲニンの重要な構造単位であるラクトン環とTHF環を連結し、残るはアルキル側鎖部にトシルエステルを導入するところまで進めることができたことから、ほぼ満足のいく成果である。
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今後の研究の推進方策 |
アルキル側鎖部に導入したトシルエステル部分にアルキンを有する側鎖を完成させることが急務である。このために、アルキル側鎖部の末端にアミノ基を導入する目処が立ったので、トシルエステルに誘導したい。
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