研究課題
本研究は、ほ乳類の糖鎖としては特異な構造であるGalNAc-GlcNAc(LacdiNAc)を持つ糖タンパク質glycodelinA(GdA)の合成を行い、その機能解明を推進する目的で行っている。そのため、LacdiNAcを持つ複合型糖鎖の合成ルートの確立、ペプチド鎖への糖鎖の導入方法、またポリペプチド鎖の構築、さらに正しい立体構造構築方法の検討を通して、GdAの全合成を達成することを目標とする。本年度は、GdAの合成に必要となるLacdiNAc構造を持つ糖鎖の化学合成法を開発した。適切に保護された単糖ユニットを合成した後、それらを縮合してLacdiNAcユニット、マンノシルキトビオースユニットを合成した。ついで、ユニット同士を縮合することにより収斂的に9糖ユニットへと導いた。最後にAsp誘導体と縮合して、官能基の変換を行い、目的とする糖アミノ酸を得ることに成功した。このルートは、ほ乳類に一般的に見られるGla-GlcNAc(LacNAc)構造を持つ複合型糖鎖の合成にも有効に利用できる有用なものである。今後、得られた糖アミノ酸をペプチド鎖合成時に導入することによりLacdiNAc構造を持つGdAの合成を試みる。また同様のルートで還元末端のGlcNAcを欠いた8糖の合成にも成功した。糖鎖付加部位にGlcNAcを持つGdAを化学合成した後、酵素を用いてこの糖鎖を導入することにより、GdA合成後にLacdiNAc構造の構築が可能となる。以上のような2つのルートにより今後LacdiNAc構造を持つGdAの合成を試みる予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画書通り、本年度の計画であるLacdiNAcを持つ複合型9糖の化学合成を達成し手織り、おおむね計画書通りに研究は進行している。
今後は、GdAのポリペプチド鎖の構築とそのフォールディングを行う。まずペプチド鎖を4つのセグメントに分割し、固相法により調製する。糖鎖付加部位では、還元末端のN-アセチルグルコサミンを持つAsn誘導体を導入しておく。ついで、セグメント同士を縮合して、GdAのポリペプチド鎖全長を構築する。この糖タンパク質は、二量体を形成していると推定されるため、単量体のタンパク質とは、若干異なるフォールディング条件が必要であると思われる。濃度、有機溶媒、変性剤、酸化剤等の条件を種々検討し、最適な条件を見いだす予定である。その後酵素により糖鎖伸長を行い、LacdiNAcを持つGdAを合成する予定である。
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