研究課題/領域番号 |
23380066
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
生物生産化学・生物有機化学
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤岡 昭三 独立行政法人理化学研究所, 中野生体膜研究室, 副主任研究員 (60165355)
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キーワード | ブラシノステロイド / 生合成 / 代謝 / シロイヌナズナ / イネ / トウモロコシ / 生合成調節 / 性決定 |
研究概要 |
本研究では、研究代表者らが開発してきたブラシノステロイド(BR)の精密微量分析技術、標識体、代謝実験系を最大限活用することにより、BRの生合成・代謝経路の全容解明と生合成の調節機構の解明を目指している。本年度は、これまでに明らかにしてきた複雑な生合成経路の中で、どのルートが主要な経路であるかをモニターするための実験系の開発を行った。様々な条件下で、シロイヌナズナ実生を用いて重水素標識22-hydroxycampesterol(22-OHCR)の代謝実験を行い、代謝物を抽出・精製後、GC/MS分析した。その結果、22-OHCRから活性型BRに至る内在性のBRとともにそれらの重水素標識の取り込みを検出することが可能な実験条件(基質濃度、代謝時間等)を見出すことに成功し、生合成初期の重水素標識BR前駆体を用いてBR生合成経路の全貌をモニターする実験系を構築することができた。また、植物ホルモン処理や外的環境要因によって、BRの内生レベルがどの程度変動するか検討した。BR以外の植物ホルモン処理でも若干の変動が観測されたが、これまでに得られた最も顕著な内生BRレベルの変動はブラシノライド処理であった。さらに、国内外の研究グループとの共同研究を展開し、BR関連変異体の解析を進めた。その結果、トウモロコシの矮性変異体(nal)はステロイド5α還元酵素をコードする遺伝子に変異があるトウモロコシでは最初のBR生合成欠損変異体であることを明らかにした。この変異体の解析を通して、BRが性決定に重要な役割を担っていることがはじめて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑な生合成経路の全容をモニターする実験系の構築に成功し、主要な流れを特定することが可能となった。また、トウモロコシではじめてBR生合成欠損変異体の同定に成功しただけでなく、BRの新たな生理機能の解明に繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
22-OHCRだけでなく、その下流に位置する生合成前駆体の重水素標識体を用いて、様々な条件下で重水素の取り込みを指標に解析を進め、主要な流れを特定することを目指す。また、国内外のグループとの共同研究をさらに展開し、BR関連変異体の解析を通して、BRの生合成・代謝やシグナル伝達の新たな知見を集積する。
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