研究課題
動物を用いて、褐藻色素フコキサンチンの内臓白色脂肪組織(WAT)中でのUCP1発現誘導機構について解析し、内臓白色脂肪組織(WAT)細胞中でのβ-3アドレナリンレセプターの発現とPGC-1の発現向上に加え、CREBのリン酸化促進活性がその主な分子機構であることを明らかにした。また、フコキサンチンと同様の化学構造(アレン構造とOH基を有する末端の6員環構造)を有するネオキサンチンを用いた動物実験を行い、ネオキサンチンが抗肥満効果と抗糖尿病効果を示すことを初めて明らかにした。一方、β-カロテン、リコピン、アスタキサンチンなどのカロテノイドを、フコキサンチンやネオキサンチンの場合と同様の条件で動物に投与しても、抗肥満効果は見られなかった。以上より、フコキサンチンやネオキサンチンの抗肥満作用の発現には、アレン構造と極性官能基を有する2個の6員環が重要なことが明らかとなった。その他、フコキサンチンの生体内抗酸化活性の詳細についても動物を用いて明らかにし、その分子機構として酸化関連酵素の制御(抗酸化酵素(SODとカタラーゼ)の発現増大と活性酸素産生酵素(NADPH)の発現抑制)を示した。ところで、アレンカロテノイドは、他の多くのカロテノイドと同様、イソプレノイド鎖をはさんで両サイドに2個の6員環(エンドグループ)を有するが、一方の6員環(アレン構造を持たない方)が消失した代謝物パラセントロン(Paracentrone)がウニから見出されている。23年度はこうした微量カロテノイドを用いた抗肥満作用について脂肪細胞での脂肪蓄積抑制作用などを指標として検討した。その結果、パラセントロンなどのように、一方の6員環(アレン構造を持たない方)が消失すると、アレンカロテノイドの抗肥満作用の活性が低下することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
23年度に予定していた動物実験と細胞実験をすべて行い、得られた成果もアレンカロテノイドの構造と活性との相関を明確に示すものであった。23年度に得られた成果により、24年度以降の計画内容も妥当であるとの判断を得ることができた。
当初の予定通り、平成24年度以降には各種のアレンカロテノイドを対象とした動物実験と細胞実験を行い、アレンカロテノイドの生理作用を、カロテノイドの構造相関との関連で検討する。具体的には、ネオキサンチンなどのアレンカロテノイドによるUCP1発現の分子機構、内臓WAT中への蓄積メカニズム、内臓WAT中でのサイトカイン分泌制御の分子機構などの解析;フコキサンチンの酵素変換物や化学変換を用いた活性の測定;ネオキサンチンの代謝物(ネオクローム)の活性測定などを行う。
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