研究課題/領域番号 |
23380070
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
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研究分担者 |
駒井 三千夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80143022)
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
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キーワード | ビタミンK / メナキノンー4 / 生体内変換 / 抗炎症 / 抗糖尿病作用 |
研究概要 |
メナキノン-4(MK-4)の新しい作用(抗炎症効果、インスリン分泌促進)と生体内変換の分子機構の解析を行った。 1)MK-4によるインスリン分泌促進作用の解析 ビタミンK欠乏飼料をKKAyマウスに与え60日間飼育した。経口糖負荷試験とインスリン負荷試験の結果、欠乏食は耐糖能の悪化とインスリン抵抗性を誘導した。また、膵臓および肝臓グルコキナーゼ、肝臓型ピルビン酸キナーゼmRNA量が有意に低下していた。以上のことから、ビタミンK欠乏食は、臓器中のMK-4量を低下させることにより、インスリン分泌、糖代謝関連遺伝子の発現量を変化させ、糖尿病の進行を早めることが示唆された。 2)MK-4による抗炎症作用の分子機構の解明 免疫共沈降法によりMK-4で処理した後のIKK複合体形成に変化は見られなかったが、LPS刺激後のTRAF6-TAK1-IKKγの相互作用、TAK1のK63ユビキチン化量が増加していた。以上のことから、MK-4の抗炎症作用は、TRAF6-TAK1-IKK複合体の形成を促進させ、LPS刺激後に起こる複合体の形成から解離に至るフィードバックループを阻害することによって起こる可能性が示唆された。 3)MK-4生体内変換の反応機構の解析 ヒト肝癌由来培養細胞をもちいて構築したin vitro変換系において、Ubiad1以外の変換律速因子として、側鎖供与体に焦点をあて解析した。スタチンで処理したところ、MK-4生成量は減少した。一方、タンパク質プレニル化酵素阻害剤で処理した場合、MK-4生成量が増加した。このことから、生成したMK4の側鎖部分はメバロン酸経路に由来すること、本経路で合成されるゲラニルゲラニル二リン酸、またはその代謝物が側鎖の基質として利用されていることが明らかになった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)MK-4によるインスリン分泌促進作用 本年度は、KKAyマウスを使用して解析を行ったが、病態悪化が急速に進み、最終的には欠乏食の影響が見えづらい結果となった。本動物以外の糖尿病モデル動物でメナキノン-4の影響の解析を行う必要がある。 2)MK-4による抗炎症作用の分子機構 免疫沈降に使用したIKKγの抗体の特異性が弱く、一部不明瞭なデータが得られた。他社抗体によって確認する必要がある。 3)MK-4生体内変換の反応機構の解析 ゲラニルゲラニル二リン酸の細胞内量をLC-MS/MSによって測定する予定で、定量法の確立を目指したが、定量的解析を行うまで、まだ条件検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1)ビタミンK欠乏飼料で飼育した動物の膵臓ランゲルハンス島を分離・培養し、グルコースに応答したインスリン分泌能について解析を行う。また、β細胞を分離し、遺伝子発現、各種シグナル分子の発現量を測定する。 2)MK-4処理したマクロファージのTAK1のK63ユビキチン化量が増加していたことから、脱ユビキチン化酵素の発現量を測定する。また、MK-4処理した細胞のコンディション培地に抗炎症性の高分子成分が含まれることから、これを分離し、その性状を明らかにする。 3)ゲラニルゲラニル二リン酸など、イソプレノイドで細胞を処理した場合の細胞内イソプレノイド量をLC-MS/MS法で測定する。
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