1)ビタミンKの抗糖尿病作用の解析 ビタミンK欠乏食を与えたKKAyマウスで見られる、糖尿病の病態悪化促進について、肝臓、および膵臓に焦点をあて解析を行った。K欠乏群で、肝臓中の肝臓型ピルビン酸キナーゼ(L-PK)mRNA量の低下が観察された。また、L-PK遺伝子の転写制御因子であるChREBPやインスリンシグナル伝達分子であるIRS2タンパク質量の低下も観察されたことから、K欠乏食により肝臓でのインスリン抵抗性がより増悪することが示唆された。膵臓においては、グルコキナーゼmRNA量の低下が観察された。ビタミンK欠乏食を給餌したKKAyマウスの膵臓よりランゲルハンス島を単離し、グルコース刺激によるインスリン分泌量を測定したところ、比較的低濃度のグルコース刺激において、インスリン分泌量が低下していた。一方、糖尿病を発症しない正常マウスを用いて同様の解析を行ったが、K欠乏食によるインスリン分泌量の低下が観察されなかった。以上のことから、K欠乏食は、Ⅱ型糖尿病モデル動物において、肝臓、膵臓の遺伝子発現変化やそれに伴うグルコース応答の減弱により、病態増悪を促進させることが示唆された。 2)ビタミンKの生体内変換の分子機構の解析 ヒト肝癌由来培養細胞での変換系を用いて、外因性の側鎖供与が変換に及ぼす影響について解析を行った。ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)で処理した場合、変換量に変化は見られなかったが、ゲラニルゲラニオール(GGOH)で処理した場合、変換量が有意に上昇した。細胞内GGPP、GGOH量を測定したところ、メナキノン-4変換量と細胞内GGPP量との間に相関関係があることが示唆された。また、メナキノン-4の代謝酵素阻害剤を共存させた場合、メナキノン-4量の増加が観察されたことから、変換生成されたメナキノン-4は、速やかに代謝されていることが示唆された。
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