これまで、ラットでのin situ小腸灌流法を開発し、胆汁経路以外の経路での小腸内腔へのコレステロール分泌が存在することを示した。しかし、非胆汁経路では経時的な分泌量の増加が認められなかった。この手術は、一晩絶食して行ってきた。しかし、絶食に伴いコレステロール分泌量の低下が起こる可能性が考えられたことから、摂食状態で手術を行うこととし、更なる手術法の改良を行った。そこで、摂食状態と絶食状態での胆汁経路および非胆汁経路へのコレステロール分泌量を4時間測定した。その結果、非胆汁経路での分泌は摂食群で絶食群よりも高かった。しかし、胆汁経路の分泌量は逆に摂食群では低下した。結果的に、両経路の合計は、絶食と摂食で差はなかった。更に、コレステロール分泌量が増加することが予想される高コレステロール食をラットに2週間与え、分泌量を調べた。その結果、胆汁および非胆汁経路共に高コレステロール食群で増加し、合計量も高かった。 次に、昨年度の研究において懸案となった経時的な非胆汁経路への分泌を調べた。0時間よりも2時間で高値を示したものの、4時間での更なる増加は認められなかった。そこで更に、昨年度に非胆汁経路でのコレステロール分泌の亢進が認められたliver X receptor(LXR)アゴニストを1週間ラットに投与し、経時的な分泌を調べた。この試験でも、0時間に比べ3時間では分泌量は増加したが、6時間での増加はなかった。以上の結果から、本試験方法では、小腸に分泌されたコレステロールの再吸収が起こっており、そのため経時的な増加が認められない可能性が考えられた。この点は極めて重大な問題点であり、試験法の更なる改良が必要であると考えられた。 以上のように、種々の食事条件で胆汁経路と非胆汁経路のコレステロール分泌量は変化することが明らかとなったが、大きな問題点も浮上する結果となった。
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