研究課題/領域番号 |
23380072
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 誠 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30114507)
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研究分担者 |
戸塚 護 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70227601)
薩 秀夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80323484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚 / セラミド / コラーゲン / 遺伝子発現 / 繊維芽細胞 / 角化細胞 |
研究概要 |
23年度の研究において、マウスに牛乳リン脂質画分(MPL)を経口投与することにより皮膚組織において様々な遺伝子の発現変化が認められたことから、24年度はマウスから分離し培養した繊維芽細胞あるいは角化細胞にMPL、あるいはその代謝物であるスフィンゴシン(SPH)、スフィンゴシン1リン酸(S1P)を加えて培養し、in vivo実験で変動が観察された遺伝子の発現状態を観察したところ、その変化は細胞レベルでも生体中と同様の傾向を示した。またMPLとSPHで遺伝子発現変化のパターンが似ていたことから、MPLの活性は含まれるスフィンゴリンミエリン及びその代謝物であるSPHなどに起因するものであることが示唆された。 次にコラーゲンを試料として取り上げ、その経口投与がマウスの皮膚に及ぼす影響をDNAマイクロアレイ解析により検討した。角化細胞ではケラチン関連遺伝子が顕著に変化したほか、皮膚の損傷に関連する遺伝子が変動するなど、コラーゲンの経口摂取は皮膚での遺伝子発現に影響を及ぼすことが示された。 一方、繊維芽細胞をコラーゲンゲル中に包埋し、ゲルの上面にマウスから分離した角化細胞を培養することでゲル表面に角化細胞層を形成させることに成功した。そこで、コラーゲンゲルの下部から透過膜を通して食品成分などを添加することにより、食品成分が角化細胞層の機能発現に及ぼす影響を観察できるモデル実験系を構築した。これを用いることにより、角化細胞の機能発現に繊維芽細胞が必要であることや、コラーゲンペプチドのような食品成分が繊維芽細胞を介して角化細胞に作用することを検証することが出来た。すなわち、コラーゲンペプチドの添加は、角化細胞層におけるケラチン関連遺伝子や細胞骨格関連遺伝子などの発現を変化させることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度には充分な検討を開始できなかったコラーゲンを試料として用いた研究を24年度には展開し、in vivoおよびin vitroでの実験が急速に進行した。特にin vitro実験として、マウスから分離した初代培養角化細胞と繊維芽細胞を組みあわせたユニークな複合培養系を構築することが出来たことは大きな成果と考えている。また、この実験系を利用することによって、複数の細胞の間の相互作用を加味した食品因子の機能性の研究に道が開けたことで、計画はおおむね順調と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
経口的に摂取したセラミドやコラーゲンが皮膚細胞の遺伝子発現に何らかの変化を誘導することは明らかと考えられるが、これまでの研究は遺伝子全般を見る網羅的なアプローチによるものであった。また主たる実験結果も遺伝子レベルでの変化に関するものである。タンパク質レベル、機能レベル、さらには皮膚細胞層の形態レベルの情報を得ることが必要であり、現在そのための実験手法の検討を進めている。また、これまで皮膚の多数の遺伝子に変化が起こることを見出したが、研究のレベルを高めるためには、少数の重要な分子にフォーカスして解析を深めていくことも必要である。どの分子に焦点を絞るかについても現在議論を進めている。
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