研究課題/領域番号 |
23380076
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大日向 耕作 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00361147)
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キーワード | 中枢神経系 / ジペプチド / エネルギー代謝 / 睡眠 |
研究概要 |
これまで我々は数多くの低分子ペプチドが、経口投与で精神的ストレス緩和作用(抗不安作用)などを示すことを見出し、神経系と相互作用することを明らかにしている。神経系は神経細胞やグリア細胞を介して細胞や各組織間の迅速な情報伝達と処理を行う高度に制御された全身性システムであり、食欲、睡眠、体温、痛覚、さらには情動、記憶・学習など多岐にわたる生理作用に関係し、生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。そこで本研究では、これまでに見出した抗不安ペプチドの作用機構の解明、およびエネルギー代謝等、他の生体調節作用について検討した。 強力な抗不安ペプチドTyr-Leu(YL)について種々の生理作用を検討した結果、エネルギー代謝改善作用を見出した。すなわち、YL投与3時間後にインスリン負荷試験を行ったところ、顕著な血糖値低下作用が認められ、極めて短時間でインスリン感受性が上昇することが判明した。グルコース負荷試験でも血糖値上昇抑制作用を示すことを見出した。現在、肥満・II型糖尿病モデル動物のKK-AyマウスにYLを長期間経口投与し、抗糖尿病作用が認められるかを検討中である。 YLの強力な抗不安作用の構造-活性相関研究により、(芳香族アミノ酸)-Leuというアミノ酸配列が重要であることが判明している。実際、レトロ体のLYには活性が認められない。興味深いことに、高架式十字迷路試験においてLeu-Phe(LF)は非常に弱い抗不安作用しか認められないものの、行動抑制作用を示すことを明らかにした。実際、オープンフィールド試験において行動量の低下が認められた。抗不安剤は睡眠誘発剤として処方されることがあり、共通の作用機構を介する場合がある。そこで、LFの睡眠誘発作用を睡眠ステージ解析システムSleepSignにより解析した。その結果、LF投与後に覚醒時間が低下しNREM睡眠時間が増加することが判明した。LFは睡眠誘発作用を示すジペプチドとしては、はじめての例である。その他、外因性神経調節ペプチドの機能解析により新しい神経経路を複数発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外因性摂食調節ペプチドの新しい機能性を複数見出し、また、新しい神経調節経路を解明した。研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
げっ歯類の睡眠誘発活性の測定には困難を伴うが、睡眠研究の第一人者である裏出良博教授と連携して効率的に研究を進めている。
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