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2012 年度 実績報告書

新しい外因性神経調節ペプチドの網羅的機能解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 23380076
研究機関京都大学

研究代表者

大日向 耕作  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00361147)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワード脳・神経 / ペプチド / 抗不安作用
研究概要

これまで我々はジペプチドTyr-Leu(YL)が医薬品に匹敵する低用量で抗不安作用を示すことを見出している(FEBS Lett. 2010)。しかしながら、YL配列を有する食品タンパク質を摂取した際に、消化管内でYLおよびその類縁体が生成するか否か不明であった。そこで本研究では、YL配列を複数有する主要な牛乳タンパク質αs1カゼインに注目し、消化管を想定した酵素条件で処理した場合にYL類縁体が生成するか否かを検討した。まず、αsカゼインをペプシン消化後に、さらにパンクレアチンで消化し、得られた消化物中に含まれるYL類縁体をLC-MS/MSシステムを用いて定量した。その結果、YLGがより効率的に(YLの5~10倍)生成することを見出した。さらに、YLGを含むモデルペプチドを化学合成し、YLG生成に寄与している消化管酵素を検討したところ、ペプシン、トリプシン、カルボキシペプチダーゼが関与していることが判明した。さらに、YLGを高含有するαsカゼインのペプシン+パンクレアチン消化物が抗不安作用を示すことをマウス高架式十字迷路試験で明らかにした。さらに、YLGを牛乳由来の新しい抗不安ペプチドとして報告した(FASEB Journal, in press)。
また、YLの構造-活性相関研究をきっかけに、LFが睡眠誘発作用を示すことを見出し、昨年、報告した。さらに本年度は、LF投与後に脳内のどのような部位が活性化されるのかをc-Fosの免疫染色により検討した。その結果、LF投与により睡眠中枢として知られる腹外側視索前野(VLPO)ではc-Fos発現は変化しなかったが、扁桃体および海馬でその発現上昇が認められた。この発現パターンは睡眠導入剤として用いられるdiazepamのものと一致していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで、Tyr-Leu(YL)など、ジペプチドのなかに強力な抗不安作用を示すものが存在することを見出していたが、食品タンパク質の酵素消化により強力な抗不安ペプチドが実際に生成するかは不明であった。主要な牛乳タンパク質αs1カゼインを消化管における酵素的条件で処理したときに、YL類縁体が生成し、かつ、抗不安作用を示すことを初めて発見したことは、抗不安ペプチドが生理的条件で生成する可能性を強く示唆しており、生理的意義を明らかにすることができたといえる。一方、睡眠誘発活性を示すジペプチドの作用機構の一端を明らかにし、基礎科学の進展に寄与した。研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

食品タンパク質から派生する外因性神経調節ペプチドについて、その作用機構を解明し、神経経路を解析する予定。既に、抗不安作用や抗うつ作用など情動調節作用を有する低分子ペプチドや、摂食調節作用などエネルギー代謝などに影響を及ぼすペプチドを見出しており、現在、それらの作用機構を検討している。内因性ペプチドとは異なる新しい情報伝達経路を発見することが期待できる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Characterization of ovolin, an orally active tryptic peptide released from ovalbumin with anxiolytic-like activity.2013

    • 著者名/発表者名
      Oda A, Kaneko K, Mizushige T, Lazarus M, Urade Y, Ohinata K.
    • 雑誌名

      J Neurochem

      巻: 未定 ページ: 未定

    • DOI

      doi: 10.1111/j.1471-4159.2012.07777.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Orally administered rubiscolin-6, a δ opioid peptide derived from Rubisco, stimulates food intake via leptomeningeal lipocallin-type prostaglandin D synthase in mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Kaneko K, Lazarus M, Miyamoto C, Oishi Y, Nagata N, Yang S, Yoshikawa M, Aritake K, Furuyashiki T, Narumiya S, Urade Y, Ohinata K.
    • 雑誌名

      Mol Nutr Food Res

      巻: 56(8) ページ: 1315-23

    • DOI

      doi: 10.1002/mnfr.201200155

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel CCK-dependent vasorelaxing dipeptide, Arg-Phe, decreases blood pressure and food intake in rodents.2012

    • 著者名/発表者名
      Kagebayashi T, Kontani N, Yamada Y, Mizushige T, Arai T, Kino K, Ohinata K.
    • 雑誌名

      Mol Nutr Food Res.

      巻: 56(9): ページ: 1456-63

    • DOI

      doi: 10.1002/mnfr.201200168.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Complement C5a exhibits anxiolytic-like activity via the prostaglandin D2-DP1 receptor system coupled to adenosine A2A and GABAA receptors.2012

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto C, Yoshida M, Yoshikawa M, Mizushige T, Ohinata K.
    • 雑誌名

      Prostaglandins Other Lipid Mediat.

      巻: 98(1-2) ページ: 17-22

    • DOI

      doi: 10.1016/j.prostaglandins.2012.03.004.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel orexigenic pathway prostaglandin D2-NPY system--involvement in orally active orexigenic δ opioid peptide.2012

    • 著者名/発表者名
      Kaneko K, Yoshikawa M, Ohinata K.
    • 雑誌名

      Neuropeptides

      巻: 46(6): ページ: 353-7

    • DOI

      doi: 10.1016/j.npep.2012.10.003.

    • 査読あり
  • [学会発表] コメ由来ペプチドの多機能性と持続化作用2012

    • 著者名/発表者名
      大日向耕作
    • 学会等名
      第66回 日本栄養・食糧学会大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20120518-20120520
    • 招待講演
  • [学会発表] Orally Active Neuromodulatory Peptides2012

    • 著者名/発表者名
      Ohinata Kousaku
    • 学会等名
      103th AOCS Annual Meeting & Expo
    • 発表場所
      Long Beach, CA,USA
    • 年月日
      20120429-20120502
    • 招待講演
  • [学会発表] Novel orally active peptides derived from food proteins

    • 著者名/発表者名
      Ohinata Kousaku
    • 学会等名
      Cornell University-Kyoto University Joint Symposium on Bioactive Food Components
    • 発表場所
      Cornell University, Ithaka, NY, USA
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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