研究課題/領域番号 |
23380077
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80225515)
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研究分担者 |
岸 博子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40359899)
加治屋 勝子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00379942)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 血管病 / 血管異常収縮 / 血管攣縮 / 膜ラフト |
研究概要 |
血管攣縮(=血管の異常収縮)は、突発的に脳梗塞や心筋梗塞などの致死的な血管病を引き起こすが、その原因が不明なため、特異的に治療可能な特効薬がなく、我が国の突然死の主因として恐れられている。申請者らは、世界に先駆けて、この血管異常収縮の原因分子として、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定したが、その詳細な病態メカニズムは未だ解明されていない。 本研究では、①血管異常収縮の分子機構を解明する事、②血管の正常機能(血圧維持を担う正常収縮)を抑制せず、異常収縮のみを選択的に阻害する食品成分を同定し、その作用機序を解明する事、を最終目的とする。血管病になった“後”に投与される医薬品とは異なり、食品は血管病になる“前”から摂取できるため、食品から特効薬成分を発見できれば、“真の予防法”が可能となる。 申請者らは、これまで世界初・独自開発の実験技術や実験装置(一部は特許取得)を用いて、血管病の病的シグナル分子と分子機構を世界に先駆けて次々に明らかにしてきた。本研究でも、それらの得意とする実験技術・装置を駆使して研究を進め、本年度は以下の研究成果を得た。 1)膜ラフトの人工モデル膜として申請者らが独自開発したハイブリッドリポソームおよび電子顕微鏡を用いてSPCの結合動態を調べた(加治屋)。血管病の危険因子であるコレステロールが、SPCの膜ラフトへの結合を増強する事が分かった。2)リン酸化プロテオミクスを用いて、Fynの下流の新規分子として2候補(P因子およびV因子)を得た(小林、岸)。3)初年度から引き続き多波長同時測定型・高速度タイムラプス蛍光顕微鏡システムのセットアップを行い(小林、岸、加治屋)、ノックダウン実験により、新規に発見したP・V因子が細胞骨格系を制御する事を発見した。4)独自開発した、血管異常収縮の特効薬の探索システムを用いて、食品成分のスクリーニングを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に予定していた4つの目標、全てにおいて、当初の予定通りの研究成果を出すことができた。それに加えて、新規シグナル分子の探索については、既に、2つの候補分子を得るという予想以上の大きな成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)新規のシグナル分子の候補として見出された2因子について、血管平滑筋細胞での機能解析を進める。また、並行して、未だ確定に至っていない、他の候補分子についても可能性を追求する。 2)血管異常収縮の特効薬成分を食品から同定すべく、スクリーニングを続ける。カラム精製装置を用いて、分画に分け、血管異常収縮の抑制活性と正常収縮の非抑制活性を指標に、特効薬成分の濃縮、精製を行い、スクリーニングを進める。このスクリーニング法は、血管異常収縮の特効薬のスクリーニング方法として、特許を取得している独自の手法であるが、これを用いて、特効薬成分を同定した実績があるので、本研究でも、食品成分から特効薬成分を同定できる可能性は高いと考える。
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