研究課題
最近、亜高山帯の構成樹種であるカンバ類に枯れ下がり等の衰退が顕在化してきた。また、対流圏(地表~11kmまでの大気層)のオゾン(以下O_3)濃度の増加も深刻化している。一方で大気中のCO_2濃度は増加し続け、近々400ppmに達する。そこでO_3とCO_2の増加の複合要因が北海道の主要樹種の成長に及ぼす影響を暴露実験によって樹冠構造と光合成機能に注目し、O_3の影響を解明する。特に、高CO_2環境では気孔が閉鎖気味になるので、O_3吸収量の抑制が期待される。そこで、詳細な生理学的調査から、樹木の炭素固定・貯留機能の推定値の信頼性を高める手法を開発する。初年度は、既存のオープントップチェンバー(OTC)を利用して、市場価格の高い先駆種のカンバ類と将来が有望視されている炭素固定・貯留能力が高いグイマツ雑種F_1の山出し苗への応答を調査した。この結果、ダケカンバではウダイカンバとシラカンバに比べてO_3による成長低下が著しかった。これはダケカンバの気孔コンダクタンスが他より高く、O_3を多く取り込んだためであろう。ウダイカンバでは高CO_2によるダウンレギュレーションが見られたが、個体乾重量は増加した。逆にダケカンバではダウンレギュレーションは見られず、個体乾重量は減少した。これは葉の寿命や葉数などが減少したためである。しかしO_3とCO_2の交互作用は、どの樹種においても認められなかった。F_1では対照と比べO_3処理区では乾重量の有意な減少が見られ、CO_2処理区では対照と比べると乾重量の有意差はなかった。CO_2×O_3処理区ではO_3処理区のような減少は見られず、対照と同程度の値を示した。ここで、O_3処理区では気孔からのO_3侵入による成長低下と考えた。一方、CO_2×O_3処理区では、高CO_2による気孔コンダクタンスの低下によってO_3の取り込みが抑制されたため、乾重量の低下が軽減された。
2: おおむね順調に進展している
年度途中の予算執行が一時的にできなくなって、予定していた実験や調査の回数を制限せざるを得ず、既存の施設を利用せざるを得なかった。
野外情報の強化と既存施設、新しい施設などを組み合わせ、対象樹種も増やして研究を進めたい。
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http://www.agr.hokudai.ac.jp/fres/silv/index.php?%C5%CF%CA%D5%CO%BF%2F%A5%AA%A5%BE%A5%F3%A4%CB%C2%DO%A4%B9%A4%EB%BC%F9%CC%DA%A4%CE%B1%FE%C5%FA