研究課題
明瞭な結果は植栽時に競合するカンバ類よりは、北海道の主要造林樹種であるカラマツ属に見られた。グイマツ雑種F1稚樹の肥大成長は高オゾン処理(60 ppb、日中7時間;東京近郊での平均最高値)で明瞭に抑制された。しかし、花粉親のニホンカラマツと雌親のグイマツ(北海道の中標津産)の稚樹には明瞭な成長抑制は見られなかった。この原因は葉量(枝も含みシュート量と換言できる)の抑制によると考えている。しかし、高二酸化炭素(CO2)処理(日中600 ppm:IPCCによって2050年頃を想定)では、全種の成長がやや促進され、オゾンとの複合影響下では、成長低下がやや緩和された。しかし、期待していた高CO2条件下での気孔開度の低下のみでは、オゾンによる成長抑制の原因を説明出来なかった。特に生育後期になると気孔開閉機能が低下するため、機能面だけではなくそれを担う葉の動態を注視する必要性がある。高オゾン(O3)条件では、本実験の範囲ではあるが、細根の生産量が抑制されることが解明された。造林樹種と競合するカンバ類では落葉前の葉からの主に窒素回収機能が低下し、この結果として、次年度での成長が阻害される可能性が得られた。回収した材料内での光合成産物である乾物重の分配機構に迫りたい。ブナで見られる梢殺(樹冠内部での肥大成長が抑制)現象が生じる原因解明を行う。なお、ブナ稚樹を使った実験では、O3+CO2処理でのバイオマス増加が著しかった。この原因は、ブナは固定成長型であり、シュート成長は年に1度だけのはずであるが、気孔コンダクタンスの低下によってO3吸収が抑制され、さらに高CO2(=700ppm)によって光合成生産量が増加したことが2度伸びを生じた結果、現存量も著しく増加した。この理由は、最近、欧州ブナの野外での実験によって、サイトカイニン系ホルモンの分泌が高オゾン環境で促進される結果ではないかと、予測されている。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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