研究課題/領域番号 |
23380084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
王 功輝 京都大学, 防災研究所, 助教 (50372553)
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研究分担者 |
末峯 章 京都大学, 防災研究所, 准教授 (00109092)
釜井 俊孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (10277379)
松浦 純生 京都大学, 防災研究所, 教授 (10353856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 極端気象 / 地すべり / 不飽和土 / 気圧変化 / 危険度評価 / 台風 / サクション / 降雨 |
研究概要 |
極端気象条件下における土砂災害の発生機構および災害軽減を研究するために、H24年度において、下記の通りに研究を実施した。 (1) 大規模地すべり地における現地計測:H23年に続きH24年度に、宮崎県西米良村にある二畝ノ谷地すべりに対して、長時間高分解能現地観測(大気圧、雨量、地表・地中変位、土壌サクション、地下水位・水温計など)を行った。また、レーザースキャナーを用いて変動斜面の末端に対して三次元的な斜面変動観測を行った。これにより、異常気象時の豪雨や大気圧の変化などによる斜面変動現象を調べた。さらに、高精度表面波探査装置を使って、大規模斜面変動による斜面土層の物性変化を調査した。 (2) 異常気象時に発生した土砂災害に対する現地調査:昨年度に続き、H23年の台風12号により紀伊半島において発生した大規模斜面崩壊および天然ダムに対して、現地調査を行い、土砂災害発生の地質、地形特徴および堆積土砂の物性調査を行った。地すべり発生前後の地形図から崩壊土砂の範囲、堆積状況などを抽出し、地形の変化およびダム上流の流域面積からダム決壊の危険度を評価した。また、異常気象時に群発した大規模斜面崩壊による山地河川の流砂および水質への影響を調べるために、紀伊半島の山地流域から石英砂を採取し、原位置宇宙線照射生成核種(10Be、 26Al)年代測定法を用いて、紀伊半島の長期的な地表面浸食速度を調べた。さらに、H24年8月の大雨により宇治市で発生した土砂災害について現地調査を行った。土砂災害の発生メカニズムを調べるために、崩壊現地から土砂を採取した。また、斜面崩壊による被害を拡大させた原因を調べて、解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)商用電源のない所である宮崎県西米良村の地すべり地において設置した動的観測システムにより、動的観測が実現できた。また、H24年の豪雨や台風の通過などにより、当該地すべりが大きく変動したため、貴重な観測データを取ることができた。(2)H23年9月の台風12号により紀伊半島において発生した数多くの大規模斜面崩壊に対する現地調査および地形解析が続けられ、群発した斜面災害による山地環境への影響を検討することができた。また、H24年8月の豪雨により宇治市において発生した土砂災害に対する調査研究は、極端気象時に都市域における土砂災害の発生機構の解明・災害軽減対策の確立に対して極めて重要なことであり、稀な事例研究ができたとも言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)宮崎県西米良村の地すべりにおいて設置した地下水位観測が、すべり面より深い土層に設置されていることはH24年度の観測結果で分かった。斜面変動中におけるすべり面附近の過剰間隙水圧を正確に観測するため、今年度には新たに過剰間隙水圧計を設置することが必要である。(2)昨年度実現できなかった花崗岩地域(広島県)斜面における斜面変動観測は、今年度に観測機器を設置し、観測を実施して異なった地質条件下での斜面変動を調べる。(3)室内斜面土層実験を実施し、斜面変動による土層内部に変形・密度変化などを調べ、これらの変化による土層内部の水分遷移およびサクションの変動を計測し、解明する。
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