研究課題/領域番号 |
23380087
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
星崎 和彦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30322655)
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研究分担者 |
松下 通也 秋田県立大学, 生物資源科学部, 研究員 (70624899)
柴田 銃江 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (10343807)
星野 大介 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (60391182)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 個体差 / 光依存性 / 近傍個体との競争 / 中立理論 / 種多様性 / 確率的偶然性 / 種の番付の逆転 / 温帯混交林 |
研究概要 |
多様な森林の群集構造の決定には、環境依存性と競争排除にもとづくニッチ過程と個体の競争的同位性に基づく中立的過程の両方が作用すると考えられるようになってきた。この2つの説明はしばしば対極的だとされがちだが、我々は、種ベースの説明であるニッチ過程は個体間の競争を予測するものではなく、必ずしも個体ベースの説明である中立仮説と矛盾するものではないという仮説をたて、落葉広葉樹林の主要10種の稚樹を対象に成長率の光に対する応答を調べた。光-成長関係には樹種ごとの光依存性と明るさに応じた順位の交替が確認され、ごく一般的な更新ニッチの種間分離が示唆された。次に、隣接個体との成長率にもとづいて局所個体間の「対戦」を評価したところ、各対戦の生じた光条件のもとで期待される種ベースの推定成長量の差(=能力差)は勝敗に有意な効果を持っていた。しかし同時に、1022の対戦の40%は光応答の種レベルの違い(能力差)が局所対戦に反映されない「番狂わせ」で、対戦の勝敗には個体差の影響がより顕著であった。これらの結果は、種ベースで検討したニッチの種差と、局所で定義される個体ベースの結果の不一致、すなわち偶然の作用が両立することすることを示唆する。種間競争が群集に果たす役割を考える際、種レベルの番付と個体レベルで起こる不確実性を区別すれば、ニッチ過程と中立的過程がどう両立するのか理解できそうだということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度の研究成果を、昨年度中に国際誌に論文を公表できた。昨年度の研究成果は、まもなく国際誌に投稿できる見込である。 一方、データの2次解析である種子散布のモデリングについては、予定ほど進展しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
競争の確率的偶然性について評価することが出来たので、中立理論のもう一つの柱となるメカニズムである、種子散布制限の解析を進める。様々な種子サイズ、種子散布シンドローム(散布型)に対して、4年間のデータをまとめて落下制限について定量的に示す。また、これらの種差を、逆算モデリングの手法で統一的なパラメータによって表現する。
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