研究課題/領域番号 |
23380090
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
寺澤 和彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部・林業試験場, 研究参事 (30414262)
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研究分担者 |
石塚 成宏 森林総合研究所, 九州支所, グループ長 (30353577)
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 教授 (60112322)
阪田 匡司 森林総合研究所, 立地環境領域, 主任研究員 (50353701)
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キーワード | 温室効果ガス / メタンフラックス / 冷温帯湿地林 / ガス輸送 / 通気組織 |
研究概要 |
湿地からの土壌メタンの放出機構において、水生植物や草本などの植物体内部の通気組織が重要な放出経路となることが従来から知られてきた。最近、樹木も土壌メタンの放出経路となりうることが報告され、その放出機構と全球メタン収支への影響について関心が高まっている。本研究では、冷温帯湿地林の林冠木を対象として、(1)樹体内部のメタン輸送経路と輸送様式、(2)メタン放出量に及ぼす環境要因、の解明に取り組む。平成23年度は、北海道中央部のヤチダモ林に調査区を設定し、樹幹表面でのメタンフラックスおよび各種環境要因の観測を行い、メタン放出量の律速要因について検討した。同調査地においてヤチダモ根系のガス輸送経路に関する予備的観察も行った。主な成果は次のとおり。 1.メタン放出量の個体間変動:ヤチダモ10個体を対象として、樹幹表面(地上15cm)でのメタンフラックスを非通気型密閉法によって7月に測定した。メタン放出量は81~1305μgCH4 m-2 h-1と個体間の差が大きく、地下水位の傾度との対応がみられた。 2.メタン放出量の周日変動:ヤチダモ3個体を対象として、樹幹表面でのメタンフラックスを8月(着葉期)と11月(落葉期)にそれぞれ24時間観測した。両時期とも、約100~500μgCH4 m-2 h-1のメタン放出が夜間を含めてみとめられたが、放出量の周日変動は小さかった。メタン放出量に明瞭な日内変動パターンはみられず、光環境や大気飽差、樹液流速との関係がみとめられないことと、落葉期にも着葉期と同様のメタン放出が観測されることから、樹体内でのメタン輸送への樹液流の関与は小さいと考えられた。 3.樹体内部のガス輸送経路:ヤチダモの根の横断切片を作成して樹皮の構造を光学顕微鏡で観察した。内樹皮には明確な破生型の通気組織は観察されなかったが、細胞間隙が発達してスポンジ状の構造となっていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地の設定および観測・調査を計画どおりに実施し、目的達成のために有効な各種のデータを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24~25年度は、計画どおり、メタン放出量の季節変動および地下水環境を主とする環境要因の観測を実施してメタン放出量のボトムアップ推定のためのデータを取得するとともに、メタンの炭素安定同位体比の分析およびヤチダモの樹体内部の木材組織の解剖学的特徴の観察を行い、メタンの輸送経路と輸送様式の解明に取り組む。
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