ササは北方系森林の林床をカバーし、森林における林業においても森林生態系保護の観点からも無視できない存在である。しかしながら、その旺盛な栄養繁殖系と開花枯死に至るまで長期間を要することから、ササの制御に関してはほとんど手が付けられていない。ササは開花すると枯死することから、ササの開花を制御することができれば育林作業において省力化を図ることが可能になる。野外での観察からササは強度の伐採後、路肩の草刈り後、風倒後に部分的に開花することが知られている。また、既往の研究から開花には光環境の違いが反映されている可能性も指摘されており、ササの部分開花には環境因子が関連していることが推察される。ササの開花に関連する遺伝子はタケの開花遺伝子と共通であることから、タケの開花遺伝子プライマーを用いてササが障害を受けたときに発現する開花遺伝子の量の変化を知ることができる。クマイザサの胚を培養し、培地にストレスを与える物質(アザシチジン酸、トリコスタチン)を投与したものについて、開花遺伝子の発現量を比較したところ、ある一定量の濃度までは投与量が増えるほど開花遺伝子の発現量は増加することが示唆された。また、部位別の分析から開花遺伝子の発現量は、花、葉、根系、芽によって異なることが明らかになった。部位別の発現量はササの種類によって異なることから、開花のメカニズムは種によって異なることが示唆された。
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