研究課題/領域番号 |
23380099
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 正人 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (30242845)
|
キーワード | あて材 / 圧縮あて材 / 成長応力 / 遺伝子発現 / ラッカーゼ |
研究概要 |
樹木は自らの姿勢を整える機能として成長応力を発生させている。この応力は樹木が健全に成長するためには欠かすことができない。だが、我々が樹木を木材として利用する場合には、その応力は反りや曲がりの原因となり、歩留まりの低下を起こしたり高度加工の妨げになったりする。本研究は、健全に成長した樹木から得る木材を高度利用することを目指し、成長応力の発生の仕組みを遺伝子発現から理解することに取り組んだ。 圧縮の成長応力は、細胞壁の木化度の上昇と非常に高い相関がある。木化に係わる遺伝子として、リグニン前駆物質の生合成に係わる酵素遺伝子、およびリグニン前駆物質の酸化重合に係わる酵素遺伝子に着目し、それぞれの発現量を解析した。試料にヒノキ苗木を用い、人為傾斜生育させることで、弱い圧縮あて材から強い圧縮あて材までを調製した。それぞれに試料から着目した遺伝子の発現量を定量した。 圧縮あて材形成部位では、リグニン前駆物質の生合成に係わる遺伝子発現量は増加していた。しかし、弱い圧縮あて材でも強い圧縮あて材でも、遺伝子発現の増加は同様であったことから、リグニン前駆物質の生合成の段階で圧縮あて材の強弱を制御していないことが明らかになった。細胞壁の木化過程で、リグニン前駆物質の生合成に次いで行われる酸化重合に係わる主酵素は、ペルオキシターゼとラッカーゼである。ペルオキシターゼの発現量は、正常材も圧縮あて材も同等であった。ラッカーゼの発現量は、圧縮あて材で増加し、弱い圧縮あて材よりも強い圧縮あて材で発現量はより増加していたことから、圧縮あて材の木化度の増加量を最終的に調節しているのは、ラッカーゼであることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画通り、木化に係わる遺伝子発現量を定量し、圧縮あて材の程度との対応を解析した。発現の可視化を目指し、凍結切片を得る手法を取得した。
|
今後の研究の推進方策 |
酵素については、遺伝子発現を可視化するより、酵素そのものを可視化した方が精度の高い解析が期待できると思われる。ペプチド抗体を作成し、ラッカーゼ等の免疫標識に取り組む予定である。また、得た酵素の機能解析をインゲルで行う予定である。圧縮あて材を形成中の細胞壁で、どの部位に、いつのタイミングで関係酵素が生じているのかを解析する。これらにより、圧縮あて材の形成と圧縮成長応力の発現機構について、理解を深める。
|