樹木はあて材をつくることで姿勢を調整している。研究代表者らは、ヒノキのあて材がつくられるときに発現する遺伝子を発見し、それをCoLac1と名付けた。CoLac1はラッカーゼをコードして木質化を導くリグニンの重合に関わっている。本年度はCoLac1がコードするラッカーゼの存在場所・存在時期を免疫標識法で調べた。 その結果から、圧縮あて材特異遺伝子CoLac1は過度のリグニン重合の役割を持ち、細胞中間層リグニンとS2L形成に大きく関与していることが分かった。以下は詳細である。 1. 作成したCoLac1ペプチド抗体の特異性を確認した:あて材分化中木部から、可溶性タンパク質と細胞壁結合タンパク質を抽出した。ウエスタンブロッティング法を用いて、抗体がCoLac1に特異性をもつことを確認した。 2. あて材分化過程でCoLac1の発現時期を明らかにした:蛍光免疫標識法によって圧縮あて材分化中木部におけるCoLac1ラッカーゼの存在を可視化した。形成層で細胞分裂した後、細胞体積を拡大している時期には、CoLac1は細胞同士を接着させる中間層のセルコーナーに多く観られた。拡大を終え、細胞壁を肥厚させる時期には、CoLac1は二次壁に多く観られた。 3. あて材細胞壁の分化過程でCoLac1の役割を検討した:CoLac1の細胞内分布を各分化段階で調べた。二次壁の肥厚が始まる細胞では、原形質にCoLac1の存在が多く観られるものと、細胞壁にCoLac1が多く観られるものがあった。CoLac1ラッカーゼは原形質で作られて、細胞壁へ分泌されると予想される。細胞壁の肥厚が進むと、CoLac1ラッカーゼは二次壁中層の外周部に多く観られた。ここは木化度が高いS2L領域になる場所であった。
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