研究課題/領域番号 |
23380100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川井 秀一 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00135609)
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研究分担者 |
梅村 研二 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70378909)
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10303596)
仲村 匡司 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10227936)
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キーワード | スギ材 / 空気浄化 / 室内環境 / 木質住環境 / 二酸化窒素 |
研究概要 |
本研究は、スギ材に着目し、スギ材の空気浄化機能発現のメカニズム解明とこの機能を最大限に活かす加工利用技術、すなわちスギ材木口面が多く現れるスギスリット材の開発ならびにその建築内装材への適用に向けた検討を行い、最終的には技術の実用化を目指すものである。 本年は、1)形状・粒度および乾燥処理方法の異なるスギ材試料を用いて二酸化窒素(NO2)通気実験を行うことで、スギ材のNO2収着における組織構造と抽出成分の影響を検討した。その結果、前者についてはスギ材木口面における寄与が高く、収着量はガスと接触可能な木口表面積に依存し、仮道管繊維方向気体透過速度の影響が大きいことが示唆された。また、後者に関して、天然乾燥ならびに人工乾燥(低温、中温、高温乾燥)処理条件で乾燥されたスギ材試料からそれぞれ脱抽出処理を行い、その前後の試料のNO2収着量の関係から、NO2収着量は抽出成分量に依存することが明らかになった。 さらに、2)保管倉庫壁面にスギスリット材を一定気積の割合で貼り付け、庫内空気質の改善効果について検証した。この結果、スギスリット材使用量の増加とともに調湿能は高くなる傾向を示し、気積率と調湿能は高い直線的な相関を示した。以上の結果、スギスリット材の優れた調湿機能を実大保存空間において確認すると共に、合わせて実大室内空間への最適化に向けた設計指針を得た。金属保存状態は保管庫間で大差が認められなかったことから、今後継続して観察を続ける予定である。 なお、これらの研究成果を取りまとめ、第62回日本木材学会に2報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スギ材のNO2除去機能について、木口面および抽出成分の影響が大きいことが明らかとなり、後者については乾燥技術に係わる知見が得られた。 スギスリット材の優れた調湿機能を実大保存空間において確認すると共に、合わせて実大室内空間への最適化に向けた設計指針を得た。 以上、本年目指した研究の成果をほぼ計画通り得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的達成のために、1)木材組織構造の影響、2)含有水分の影響、3)抽出成分の影響について総合的な空気浄化機能発現メカニズム解明を試みる。得られた結果を基に、スギ材スリット加工方法の詳細を検討し、スギ材の空気浄化機能を生かした内装材の開発を行う。 生存圏研究所内に隣接した二つの居室(各20m2、鉄骨造5階建、2010年全面改装)をレンタル・ラボとして確保し、気積率を適宜変えることにより空気浄化機能、調湿機能、居住性(視覚特性)、意匠性などについて設計に必用なデータの集積を行う。
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