研究課題/領域番号 |
23380100
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川井 秀一 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00135609)
|
研究分担者 |
梅村 研二 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70378909)
仲村 匡司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10227936)
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10303596)
木村 彰孝 長崎大学, 教育学部, 助教 (50508348)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 室内環境 / 大気汚染物質 / スギ材 / 居住性 |
研究概要 |
スギ材の乾燥条件(すなわち、天然乾燥、低温、中温及び高温乾燥)と抽出成分残留量との関係を調べ、材内に残留する抽出成分量が乾燥温度の上昇と共に減少することを明らかにした。さらに、この抽出成分量がスギ材のNO2の除去能力と比例関係にあることを示した。さらに木口材の機能を実用に活かすために、スギ材板目面に繊維直交方向に多数の溝を等間隔に切削加工して木口を露出させた内装パネル(スギ木口スリットパネル)を開発し、板目材を比較対象に用いて、使用量の異なる実大保管庫内の温湿度と空気質を経時的に測定した。その結果、スリット材使用量の増加とともに調湿能は高くなる傾向を示し、その空気中に主にセスキテルペン類が多く含まれることを明らかにした。 次に、隣接する二つの事務室(各20m2)の一つをコントロール、もう一つの居室をスギ木口スリット材による内装をおこない、放散されるテルペン類の種類や濃度などの空気質特性とヒトの健康への影響について解明を試みた。室内空気質として観測されたスギ材由来揮発成分の多くが、保管庫内の場合と同様に、セスキテルペン類であり、主成分はδ-カジネンであった。ヒトの生理学的な応答として作業前後の唾液アミラーゼ活性を測定し、その変化量がスギ材室では減少し、反対に対照室では増大する結果を得た。スギ材由来セスキテルペン類は、計算作業によるストレス状態を緩和し、生理的に落ち着いた状態にする可能性が示唆された。また、作業中の交感神経系や心拍数の変動についても、唾液中アミラーゼ活性の変動を支持する結果であった。 なお、得られた研究結果を、雑誌(生存圏研究)に1報、第63回日本木材学会年次大会(25年3月)に3報、日本木材加工技術協会年次大会(1報)、及び日本室内環境学会(24年12月)に1報を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、スギ材の空気質浄化機能を解明し、この機能を最大限に活かす加工利用技術の開発ならびにその建築内装材への適用に向けた検討を行い、技術の実用化を目指すものである。 本研究を通じて、スギ材の汚染物質除去機能に対する木材木口組織と抽出成分の影響について明らかにした。また、乾燥及びスリット加工技術の検討を行い、次いでスギ木口スリット材を用いて実大室内空間における空気質の改善効果を検証すると共に、居住空間への最適化に向けた設計データを集積した。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度は、スギ木口スリット材を設置した居住空間の空気質、とくに木材由来VOCがヒトへ与える生理/心理的影響について昨年度に引き続き検討し、快適な木質環境の創成に向けてデータを蓄積する。 現状で、研究上の技術課題は特に存在しないので、計画に沿って実験を進める予定である。
|