平成25年度は、スギ形成層内での各チューブリン遺伝子の局所的な遺伝子発現解析を行い、特に新たな遺伝子発現定量解析方法として、デジタルPCRによる微量遺伝子発現解析を行った。形成層内を細胞分裂領域および細胞拡大領域の2領域に分け、それぞれからレーザーマイクロダイセクションにより細胞試料を採取し、全RNAを抽出した。cDNA合成の後、これらが単独に区画化されるようドロップレットで内包した。この状態でPCRを行い、遺伝子発現の絶対量を測定した。形成層細胞試料の採取については、細胞分裂領域および細胞拡大領域とも40枚の凍結乾燥切片(20μm厚)から行った。従来の定量PCR解析では、この細胞量では十分な精度でチューブリン遺伝子の発現量を検出することができなかったが、デジタルPCRによる発現解析を行ったことで、高精度でかつ絶対定量により遺伝子発現解析を行うことができた。チューブリン遺伝子の発現量は、細胞分裂領域から細胞拡大領域に移行すると相対的に増加した。α-チューブリン遺伝子間での発現量比は、細胞分裂領域と細胞拡大領域の間で異なり、細胞拡大領域で発現量が増加する遺伝子があった。β-チューブリン遺伝子間についても、細胞分裂領域と細胞拡大領域の間で発現量比が異なることが明らかとなり、細胞拡大領域で発現量が著しく増加する遺伝子があった。これらの結果から、樹木形成層の分化ステージによって、チューブリン遺伝子の発現量が異なることが示唆された。さらに、分化ステージによってチューブリン遺伝子間の発現量比が変化し、このことが微小管の配向変換に関与していることが示唆された。
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