研究課題
我国の重要な水産資源であるサケ(シロザケ)は、稚魚が生まれた川(母川)のニオイを降河時に記銘し、親魚がそのニオイを遡河時に想起して母川回帰する。サケの母川水ニオイに対する嗅覚記憶機構を解明するため、嗅覚記憶に関連する脳内分子を解析する研究を行い、平成27年度は下記のような成果を得た。1.稚魚の母川記銘時の甲状腺ホルモン(T4)とNMDA受容体必須サブユニットNR1の関係:T4を餌に混ぜてシロザケ稚魚に給餌投与すると、NR1遺伝子発現量が投与後4日目に対照群に対して有意に増加した。しかし、1週間~2週間後では対照群と有意差はなく、母川記銘は1週間以内に行われることが明らかになった。2.稚魚の降河回遊に伴う嗅覚機能の変化:千歳ふ化場から千歳川・石狩川を経て石狩湾までのシロザケ稚魚の降河回遊に伴う嗅電図(EOG)を測定した結果、シロザケ稚魚は新たな河川水に遭遇すると嗅覚感受性が有意に増加することが判明した。3.親魚の母川遡上時のGnRHとNMDAの役割:ベーリング海から千歳川に回帰するシロザケ親魚のsGnRH-I・II遺伝子発現量は、母川回帰に伴い脳部位ごと雌雄でピークが異なるが増加する傾向がみられ、嗅球のNR1遺伝子発現量は石狩湾から千歳ふ化場にかけ雄で有意に増加した。4.親魚の性成熟促進および遡河回遊に伴う嗅覚機能の変化:石狩湾に回帰した海水中のシロザケ親魚のGnRHアナログ(GnRHa)を投与して性成熟を促進しEOGを測定すると、他ふ化場起源の迷入魚が含まれている場合は石狩川河川水に対して、千歳ふ化場起源の母川回帰魚の場合は千歳川河川水に対して有意に感受性が高く、迷入魚と母川回帰魚の河川水に対する嗅覚応答が異なっていた。シロザケ親魚の遡河回遊に伴うEOGは、非母川水である豊平川河川水より、母川水である石狩川河川水と千歳川河川水に対して有意に高かった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sex difference in metabolic rate and swimming performance in pink salmon (Oncorhynchus gorbuscha): the effect of male secondary sexual traits
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