研究課題/領域番号 |
23380107
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80212249)
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研究分担者 |
荒井 克俊 北海道大学, 水産科学研究科, 教授 (00137902)
安房田 智司 新潟大学, 理学研究院, 助教 (60569002)
早川 洋一 国際基督教大学, 教養学部, 研究員 (50384011)
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キーワード | 遺伝学 / 進化 / 水産学 / 生態学 |
研究概要 |
北太平洋沿岸に広く分布するアイナメ属には、スジアイナメ型mtDNAを持ち、アイナメ雄およびクジメ雄と交配する妊性を持った雑種集団(前者をアイナメ系雑種、後者をクジメ系雑種と呼ぶ)が存在する。これまでの研究でその雑種は雑種生殖(ハイブリドジェネシス)という半クローン(hemi-clone)を産む特殊な生殖様式をとることが明らかになった。 そこで、本年度は、2系統ある雑種集団の系統関係と分岐年代推定を行った。また、この後、ゲノム除去過程を明らかにするため、その準備として、純粋3種の染色体の核型を観察した。系統分析は、mtDNA多型領域をマーカーとして用いた。クジメ系雑種、アイナメ系雑種ともに多型が少なく、4遺伝子座3800塩基対の配列をきめた。その結果、以下のことが分かった。 1、クジメ系雑種の出現がアイナメ系より早い 2、アイナメ系はスジアイナメとアイナメの雑種が起源ではなく、クジメ系雑種がホストをクジメからアイナメにホストスイッチによる 3、アイナメ系へのホストスイッチは、系統樹上でーつのクラスターにまとまることと多型の少なさから、数千年前くらいに1度だけ起こったと考えられた 4、クジメ系はmtDNAの結果は、多系統を示したが、雑種生殖がスジアイナメと戻し交配してスジアイナメゲノムを2対持つと、メンデリアンになる可能性があることから単系統の可能性がある。この点については、次年度に、マイクロサテライト分析で確認する。また、染色体の観察では、3種とも染色体は小さく、染色体数も3種で差はなかったが、各染色体の腕数が大きく違ったので、蛍光染色では識別可能と考えられた。次年度観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
想像していた以上に複雑で、多くの新知見が得られたことである。たとえば、アイナメ系雑種の起源が種間交雑ではなく、クジメ系雑種のホストスイッチであったこと。また、アイナメ系雑種に多型が少ないことで、多くの遺伝子座を調べなければならなかったが、比較的最近になって出現したことが分かり、研究材料としての希少性が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
雄ゲノム除去の過程を明らかにしたい。3種間の染色体の違いを見つけることができ、準備が進んできたので、今年度の繁殖期までには観察を進めたい。また、クジメ系雑種がスジアイナメと戻し交配すると、メンデリアンになる可能性が出てきたので、これを確かめるとともに、多系統か単系統かを核ゲノムのマーカーを使って確かめたい。
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