研究課題
当該研究では、硬骨魚類の卵門への精子誘導と卵巣腔液の精子活性化機能に焦点を当て、精子に対する一連の働きかけ、「卵‐精子相互作用」が硬骨魚類に広く存在することを明らかにすることを主目的としている。平成26年度、カタクチイワシを用いて高速CCDカメラによる精子運動撮影と画像解析を組み合わせて精子活性を解析した結果、実験時刻による顕著な精子活性の差異があることを見出した。そのため、一定の飼育環境下で雌の排卵時刻(午後8-9時)を特定し、それをもとに午前9時、午後1時、午後5時、午後9時、午前1時に精巣をサンプリングして、海水中での精子運動活性を解析した。その結果、運動活性を示す精子の比率は午前9時の10%未満から時間を追って増加し、雌の排卵時刻午後9時には65%以上に達した。このことから、輸精管内の精子は雌の排卵に合わせて運動能を獲得する「概日リズム」を持つことを明らかにした。排卵時刻午後9時の精子を用いて卵巣腔液の精子活性化機能の解析を行った結果、精子運動速度を高める効果が認められた。同活性は卵巣腔液を約0.1%添加した海水で強く認められ、タンパク質等の機能性因子の存在を強く裏付けた。平成26年度、先に得られたカタクチイワシ精子誘導因子(SMIF)遺伝子候補の配列に加え、卵巣、精巣で発現するα2-マクログロブリンファミリー遺伝子1種及び肝臓にて発現するα2-マクログロブリン様遺伝子の解析を実施した。その結果、3種の遺伝子は極めて高い相同性を示し、先の候補がSMIF遺伝子であることを示唆する明瞭な根拠を得るには至らなかった。しかし卵巣特異的な遺伝子の配列をもとにスマ等の他魚種の成熟卵巣でPCR解析を行った結果からは、相同性を持つ配列が得られ、精子誘導因子(SMIF)遺伝子候補の配列が多くの魚種で見出されることが分かった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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