本研究は、日本沿岸でのエイ類増加の一因をその特異な繁殖戦略に求め、海洋温暖化がエイ類の再生産に与える影響と環境への適応戦略の解明を目的としたものである。徹底したフィールド調査によりトビエイ亜目6種の受精卵と各発達ステージにおける胎仔の標本採集に成功し、それらのうち少なくとも4種が発生初期に胚休眠(発生が休止し、長いもので10ヵ月の間休眠状態になり、ごくわずかな期間で胎仔は劇的な成長を遂げる)をもつ可能性があることを明らかにした。本研究の結果から、胚休眠は本来、熱帯・亜熱帯海域に生息する種が温帯域で冬季の著しい水温の低下を克服し、繁殖成功を高めるための適応である可能性を示唆するに至った。
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