研究課題/領域番号 |
23380113
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
征矢野 清 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (80260735)
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研究分担者 |
長江 真樹 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (00315227)
ニシハラ グレゴリーナオキ 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (40508321)
河端 雄毅 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 助教 (50606712)
河邊 玲 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (80380830)
照屋 和久 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 石垣支所長 (60443347)
武部 孝行 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (40526993)
名波 敦 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (90372060)
佐藤 琢 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (20455504)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 繁殖整理 / ハタ科魚類 / 産卵行動 / 産卵場環境 / バイオロギング |
研究概要 |
本研究では、ハタ科魚類の繁殖機構の解明を、1)外部環境変化と関連した産卵時期の決定機構解明、2)配偶子最終成熟と産卵行動惹起に関する生理機構の解明、3)産卵遂行と資源拡散に必要な産卵場環境の解明、に焦点をあて研究を進めている。平成24年度の具体的研究成果を以下の通りである。 1)ナミハタの月周性を確認するため、石垣島に水揚げされる本種を約2日毎に採集し、生殖腺発達と産卵の有無を組織学的に確認した。その結果、下弦の月に向けて生殖腺は発達し、その数日後から産卵を行うことが明らかとなった。この成果は3)において実施した産卵場所への移動および生息環境への回帰のパターンと一致することが分かった。 2)カンモンハタ雌の最終成熟から産卵には、雄からの情報伝達物質(フェロモン)が重要な役割を演じている。そこで、雌あるいは雄の飼育水を注入した水槽で雌雄を個別に飼育し、これらの個体における脳内の神経情報物質(セロトニン・ドーパミン)と生殖腺刺激ホルモンmRNAの測定を行なった。セロトニン・ドーパミンの変化は顕著ではなく、また、個体差も大きいことから今後の検討が必要であるが、雄からのフェロモンによりLHβ遺伝子の発現が誘導されること、加えて、GtH受容体の変化が最終成熟の制御に関わる可能性があることが示された。 3)ナミハタの生息場所および産卵場所と推定されるエリアを地元情報および海洋観測により特定し、沖縄県小浜島および石西礁湖に約20台の受信機を設置した。その後、ナミハタに発信機を装着し放流した。その結果、雄が雌よりも早く生息場所から産卵場へ移動すること、雌は産卵の数日前に産卵場へ移動し、産卵後速やかに生息場所に戻ることが確認された。また、この行動は産卵期のみで確認された。西表島と小浜島の間に位置するヨナラ水道では大規模な産卵集群を作ることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ホルモン遺伝子および脳内ホルモンの測定系が順調に立ち上がり、測定が可能となった。これを利用して、最終成熟および産卵期のホルモン動態が明らかになりつつある。ただし、脳内情報伝達物質であるセロトニンやドーパミンなどの生体アミン系のホルモンの挙動は、予想に反して明確でなく、検討すべき点が残された。 2)ナミハタの産卵場への移動および生息場所への回帰をバイオロギングにより確かめたところ、産卵時の行動および産卵場が明らかとなった。この成果は、ハタ科魚類の産卵生理生態を理解する上で極めて有意義なものである。また、天然から捕獲した個体の生殖腺の発達および成熟と産卵場への移動には明確な関連が認められた。本年度も引き続き行動解析を実施しており、年度による差がないことが確かめられれば、天然資源の管理に向けた極めて重要なデータとなる。 このように、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、平成24年度までの成果および問題点を基に、以下の点に焦点を置いて実施する。 1)フェロモンを用いた雌雄間のコミュニケーションとそれに伴う生理変化を、ナミハタとカンモンハタを用いて実施する。月周期に伴う生殖腺刺激ホルモンおよび脳内情報伝達物質の挙動を再度測定すると共に、フェロモン感受後の脳内変化を両魚種において詳細に検討し、ハタ科魚類に共通する成熟機構を明らかにする。 2)ナミハタを水槽内で成熟・産卵させ、それに伴う内分泌変化の情報を得ると共に、天然海域からナミハタを捕獲し、生殖腺の発達に伴うホルモンの挙動を明らかにする。 3)産卵場における孵化仔魚の動態を明らかにするために、仔魚の形態観察と比重測定を行い、仔魚の沈降・浮上能力をモデル化し、天然における移動拡散を推定する。 4)ナミハタの周年を通した行動パターンをバイオロギングによって明らかにする。 以上の結果を総合し、ハタ科魚類の成熟産卵の生理生態学的特徴を整理し、資源管理に向けた情報発信を行う予定である。
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