研究概要 |
1.水産重要魚種におけるCRHニューロンの脳内分布 魚類全般における副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)ニューロンの分布の普遍性あるいは種特異性を解明することを目的として,免疫組織化学染色で水産重要魚種のCRHニューロンの脳内分布を調べた.CRHのアミノ酸配列は系統発生的に非常に良く保存されているので,市販の抗哺乳類CRH抗体を用いた.ウナギでは視床下部にCRH免疫陽性細胞体が検出され,CRH免疫陽性繊維は視床下部以外にも検出された.現在は,マツカワ,サクラマス,チョウザメなどでも解析を進めている. 2.魚類CRHのcDNAクローニング 平成24年度にウナギのCRH遺伝子発現量を測定する飼育実験を行う.そこで,リアルタイム定量PCR法を確立するためにウナギ視床下部からCRH cDNAをクローニングする.活ウナギを購入し,視床下部を凍結した.他魚種(コイ,ニジマスなど)の既知のCRH cDNAの塩基配列を基にして縮重プライマーをデザインし,PCR法でCRH cDNAをクローニング中である。 3.CRHの時間分解蛍光免疫測定法の確立 CRHペプチド量の測定のために,時間分解蛍光免疫測定法を確立する.96穴マイクロプレートを2次抗体で固相化後,抗CRH抗体,標準試料または未知試料,およびユーロピウム(Eu)標識CRHを添加して競合反応させた.最後に増強試薬でEuを遊離させて蛍光強度を測定した.その結果,標準試料1.6ng/mlから100ng/mlの範囲で標準曲線が得られた.本測定系の有効性を確認するために,変動係数,他の神経ペプチドとの交差率,最小検出量,回収率,および代表的な魚種の組織抽出物の競合曲線と標準曲線との平行性の有無を解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災によって,北里大学海洋生命科学部はキャンパス移転を余儀なくされた.研究スペースは他学部の一室を借用している状況で,決して十分ではない,本研究課題は平成23年4月時点では不採択であったが,11月下旬に追加採択された.その後,本研究課題遂行のために研究環境を整えるのに時間を要したため,「研究の進行はやや遅れている」と判断した.
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