研究課題/領域番号 |
23380119
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
水産学一般
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
荒木 和男 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・養殖技術部, 主幹研究員 (00202739)
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研究分担者 |
岡本 裕之 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・養殖技術部, 主任研究員 (50372040)
岡内 正典 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・養殖技術部, 主幹研究員 (40372023)
尾崎 照遵 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・養殖技術部, 主任研究員 (40416045)
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キーワード | 感染症抵抗性 / 発現解析 / ヒラメ / 育種 / 自然免疫 |
研究概要 |
4つのQTLマーカーで選抜されたレンサ球菌感染症抵抗性の家系のヒラメ及びコントロールのヒラメの受精後6ヶ月の個体にレンサ球菌を腹腔内注射することにより感染を成立させた。感染後、2時間、4時間、8時間、10時間及び2日目に血液及び腎臓の採取を行い、抽出したRNAをもとにcDNAライブラリーを作成し、Illumina社のGenetic Analyger IIによる網羅的塩基配列の解析を行った。1サンプル当たりの解析数は平均2000万リードであった。得られた配列情報をNCBIで公開されているヒラメの発現遺伝子の配列にマッピングすることによって、解析したヒラメの腎臓で実際に発現している遺伝子の相対的なコピー数の比較を行った。腎臓特異的に発現している遺伝子群をターゲットとしたためマッピング率は5パーセントであった。解析の結果、レンサ球菌感染症抵抗性の個体では、感染後自然免疫に関連するインターロイキンやToll like受容体、NKEF、補体、チゾチーム遺伝子以外にc-kit遺伝子やdct.コルチゾールなどリンパ球の幹細胞や色素細胞の分化に関連する遺伝子の発現も多く見られた。また、抵抗性の家系では感染前からToll like受容体の遺伝子群の発現が高いことが分かった。また、感染後にサンプリングすることなく飼育実験を行って生き残ったヒラメでは無眼側が黒化する傾向が見られた。 以上のことから、これまでの顆粒球やマクロファージの測定の結果とあわせて、選抜されたレンサ球菌耐病性のヒラメの家系では、元々自然免疫系の活性が高く、感染後にさらに自然免疫系が活性化されるために耐病性を示す可能性を示唆する。また、リンパ球や色素細胞の分化に関連する遺伝子の発現も増加し、感染後生存した個体では無眼側で黒化が進むことは極めて興味深い。 この様に、研究計画通りに、次世代シークエンサーを使用した網羅的発現解析では、直接コピーをを比較出来るため、DNAチップによる解析よりも正確に発現様式を解析出来ることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画通りに、選抜育種したレンサ球菌感染症抵抗性のヒラメの家系を用いてレンサ球菌の感染実験を行い、感染前後の経時的な腎臓における発現遺伝子のコピー数の比較を行い、物理地図上にマッピングする候補遺伝子を同定することが出来た。また、発現実験と飼育試験から、本家系では、もともと自然免疫系の活性が高く、感染後リンパ球と色素細胞の分化に関連するckit等の遺伝子の発現が増強し、その関係で、感染後生き残ったヒラメの無眼側で成体型黒色素細胞が分化し、黒化することが分かるなど研究計画以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の解析で、レンサ球菌感染症抵抗性の家系の個体で感染後に発現が増加する遺伝子について、物理地図上にマッピングを行い、レンサ球菌感染抵抗性に連鎖する連鎖群7,10,11,17にマッピングされるか検討する。また、Digital PCRアレイを用いて、発現解析の再現性の検討を行うと共に、これらの重要領域にマッピングされている遺伝子について、感染前後の経時的な発現解析を行い、レンサ球菌感染症抵抗性に関連する遺伝子の絞り込みを行う。
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