研究課題/領域番号 |
23380123
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70281003)
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研究分担者 |
芳賀 穣 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00432063)
佐藤 秀一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (80154053)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脂肪酸代謝酵素 / ニベ / 遺伝子導入 |
研究概要 |
多くの海産魚は、エイコサペンタエン酸(EPA; 20:5n-3)やドコサヘキサエン酸(DHA; 22:6n-3)を必須脂肪酸として要求することが明らかとなっている。これは、EPA/DHA合成経路におけるいくつかの脂肪酸代謝酵素の欠損、もしくは低活性が原因であると考えられている。そこで我々は、EPA/DHA合成に重要な種々の脂肪酸代謝酵素遺伝子を他種から単離し、海産魚に遺伝子導入することで、自らEPA/DHAを合成可能である海産魚系統の作出を目指している。これまでの成果より、ヤマメ elongation of very long chain fatty acids protein 2遺伝子(OmElo2)をニベに導入し、生体内の主な脂肪酸代謝の場である肝臓において高発現させることで、その脂肪酸組成を改変することに成功している。そこで本年度は、この系統の肝臓以外の組織における遺伝子発現と脂肪酸組成を解析した。 供試魚には、海産魚用配合飼料を1日2回飽食給餌した。4カ月齢の遺伝子導入個体(体重:90g)の各組織におけるOmElo2の発現をRT-PCRにて解析した。続いて、各組織における脂肪酸分析を行い、非遺伝子導入同腹仔と比較した。 遺伝子導入ニベにおいては、心臓および肝臓で特に高いOmElo2遺伝子の発現が認められ、脳、眼球、筋肉、胃、精巣では微弱な発現が確認された。一方、腎臓および腸では発現が認められなかった。しかし、脂肪酸分析の結果、OmElo2遺伝子が発現していない腎臓および腸も含めた全ての組織から、非遺伝子導入個体では検出されなかったTPA(24:5n-3)が検出された。また、眼球、肝臓、精巣においてはDPA(22:5n-3)の割合が非遺伝子導入個体と比較して上昇した(順に1.63% vs 0.94%、4.12% vs 1.80%、3.43% vs 2.65%)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤマメ脂肪酸代謝酵素を当初の目的通り、分離浮遊卵を産出する海産魚であるニベに導入し、その系統化に成功している。さらに、これら導入遺伝子をニベの肝臓を中心に機能させることに成功し、その脂肪酸代謝系を改変することに成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
仔稚魚期の飼育実験について予備実験はすでに終了しており、栄養強化を行っていない餌を用いた場合、遺伝子導入魚の生残が通常個体より大きく改善されることはないことが示唆されている。今後は、この原因を明らかにするとともに、より定量的な飼育実験を行い、栄養強化が不要な海産種苗つくりを目指す。また、DHAの生産効率の改善を目指し、Δ4鎖長延長酵素導入系統樹立を引き続き行う。
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