本研究は、「特異」カロテノイド、シフォナキサンチンの抗肥満作用を明らかにし、機能性食品や医薬品としての有効性を探るとともに、シフォナキサンチンの特異構造に基づく新規作用機構を見いだすことを目的とした。 前駆脂肪細胞である3T3-L1細胞を用いてシフォナキサンチンが脂肪細胞の分化や成熟に与える影響を評価した。その結果、シフォナキサンチンは3T3-L1細胞の脂肪蓄積を有意に抑制し、脂肪細胞分化マーカーのmRNA発現レベルを有意に低下させることが見出された。さらに、分化した脂肪細胞でもシフォナキサンチンの添加により細胞内脂質蓄積量が減少し、脂質合成関連遺伝子のmRNA発現も有意に低下することを明らかにした。 次に、動物実験による生体レベルでの評価を行った。緑藻ミル(Codium fragile)アセトン抽出物より得られたシフォナキサンチン濃縮物(純度73%)を試料として用い、肥満モデルKK-Ayマウスに一日1.5mgのシフォナキサンチンとなるように胃ゾンデを用いて投与したところ、6週間の連続投与によって、腸間膜脂肪重量の有意な低下が認められた。さらに白色脂肪組織において、いくつかの脂肪合成関連遺伝子の発現が有意に低下し、脂肪分解関連遺伝子の発現が有意に上昇した。 以上の結果から、緑藻に特徴的に含まれるカロテノイドであるシフォナキサンチンは脂肪細胞の脂質合成を抑制し、さらに脂質分解を促進することで、抗肥満作用を示すことが明らかとなった。
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