研究課題/領域番号 |
23380126
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 康貴 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90191452)
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研究分担者 |
馬奈木 俊介 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70372456)
増田 清敬 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20512768)
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キーワード | 環境政策 / 環境分析 |
研究概要 |
EUでは、環境に配慮した農業生産を行うなどの一定要件を満たした農業生産者に補助金等を支払うというクロス・コンプライアンス(CC)を適用した農業政策が実施されている。日本においてもCCを適用した補助金等の支払いをうけるためのCC受給要件は、環境保全など、様々な取り組み例が想定される。これらCC受給要件を、農業由来の環境負荷抑制や多面的機能発揮などの外部性効果とみなして評価して、CC受給要件の内容設計に資する手法の開発や適用を試み、CCを適用した新たな農業政策の設計に資する基礎的知見を得る点が、本研究の課題である。この研究課題の解明に接近すべく、本年度は以下の研究を実施した。 1.第一は、研究サーベイと実態調査である。具体的には、まず、外部性評価の研究サーベイについては、国内外の学術論文・文献を電子ジャーナルなどを利用してサーベイし、また学会参加なども通じて関連する情報を入手した。さらに、開発手法の適用対象となる韓国と日本の事例について、実態調査を実施した。 2.第二は、クロス・コンプライアンスの受給要件設定に資する評価手法の開発と適用である。具体的には、農業農村整備事業における農業排水路整備を事例とし、環境影響を総合的に評価できるライフサイクルアセスメントを適用し、環境に対する影響緩和措置を講じた環境保全型工法で農業排水路を整備した場合、従来型工法と比べて自然環境や生物多様性は保全される一方で、温室効果ガスは低減するのか否かを評価できる手法の開発と適用を試みた。この手法を、現況で排水能力が低下している土水路の改修を想定したモデル事例に用した結果、植物の生育や生物の生息に適した工法によって環境への配慮はなされる一方で,施工や農地の改廃で温室効果ガス排出が増加する傾向が示唆される点などが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初の研究計画に沿って、おおむね順調に進展している。具体的には、外部性評価の研究サーベイについては、国内外の学術論文・文献を電子ジャーナルなどを利用してサーベイし、また学会参加なども通じて関連する情報も入手し、最新の研究動向をサーベイできた。開発手法の適用対象となる韓国と日本を対象とした実態調査について、調査のごく一部が次年度に繰り越されたが、この影響は軽微であり、全体として概ね順調な調査が実施できた。手法開発とその適用についても、環境影響を総合的に評価できるライフサイクルアセスメントを適用し、環境に対する影響緩和措置を講じた環境保全型工法で農業排水路を整備した場合、従来型工法と比べて自然環境や生物多様性は保全される一方で,温室効果ガスは低減するのか否かを評価できる手法の開発と適用を試みた成果などの複数の研究成果を、雑誌論文、学会発表、図書として公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度における研究の推進方策は、次の通りである。外部性評価の研究サーベイについては、引き続き国内外の学術論文・文献を電子ジャーナルなどを利用してサーベイし、また学会参加なども通じて関連する情報をさらに入手して、平成24年度時点における最新の研究動向を整理する予定である。開発手法の適用対象となる実態調査については、前年度に調査実施した事例を対象に、補足調査などを実施する予定である。こうしてサーベイし、また実態調査を通じて入手した情報・知見を、本年度に実施する農業由来の環境負荷抑制に係る事例などを対象した環境影響評価手法の開発と適用に反映させる予定である。また、平成24年度に研究実施した成果を、学会発表し、論文としてとりまとめて行く予定である。 平成25年度における研究の推進方策は、次の通りである。平成24年度までに開発し適用された手法などを参考にして設定されたクロス・コンプライアンス要件が、政策に適用される場合に、考慮すべき論点について考察する予定である。財政制約が厳しくなっている日本において、広く国民的な合意を獲得しうる農業政策の設計が必要である。このため、設定されたクロス・コンプライアンス要件などに対する国民側から見た評価を、アンケート調査分析結果なども利用し、明らかにして行く予定である。こうして平成25年度中に研究実施した成果を、学会発表し、論文としてとりまとめて行くと共に、平成23年度から実施してきた研究全体を総括して、研究最終報告書をとりまとめる計画である。
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