研究課題
本研究課題は,農用地を利用し生物多様性の保全および向上を図る手法の一つとして諸外国で広く活用されている生物多様性バンキング制度に注目し,海外ではどのような制度・枠組みの下で実施されているのか詳細に調査し,社会科学および自然科学の両見地から我が国に適したバイオバンキング制度の導入が可能か否か,そして可能であるならば,どのような制度が望ましいのか検討するものである。最終年度となる2013年度の主な成果は次のとおりである。① 国内に設けた実験圃場や都市近郊の農用地において,バンクの生物多様性を示しうる生物種を調査し,国内でバイオバンキングを導入した際に農業・農村で保全したい農地性生物を保全対象生物として鳥類・昆虫類を中心に20種選定し,それらの生息場所および目標とすべき保全数の目安を示した。② 海外での制度調査やヒアリング調査の結果を踏まえ,欧州では農業環境政策の中で生物多様性をどのように位置づけ評価しているのか,また自然科学的な(特に生態学的な)見地に基づき,環境保全型農業を通じた生物多様性保全の必要性を論じるなど,学術研究論文および口頭発表を通じて対外的に成果を公表した。③ 諸外国では法的な枠組みを整備することでバイオバンキング制度を確立させ運用していたのに対し,わが国では法的な裏付け,整備がなされておらず,生物多様性バンキング制度の国内への導入は現時点では困難な側面が多いとの結論に至った。とはいえ,農業環境政策を通じて生物多様性を保全していく必要性は高いこと,また昨今の財政難から政府の補助金頼みの農業環境政策による支援には限界があることを考慮し,補助金に依存しない市場メカニズム活用型で,かつ生物多様性の保全に資する農業環境政策に関連する取り組み事例について調査・分析した結果をまとめている。それらは出版物として刊行する予定である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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