研究課題/領域番号 |
23380137
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩澤 昌 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80134154)
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研究分担者 |
吉田 修一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90355595)
西田 和弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90554494)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 根圏の窒素収支 / 脱窒 / 降雨浸透 / 放射性セシウム |
研究概要 |
本研究の主たる調査地の東京大学農学生命科学研究科付属生態調和機構(西東京市)は透水性の高い関東ロームの台地上にあって、表面流出が生じることがなく、降雨量(および水田では潅漑水量)から蒸発散量を差し引いた残り(約1000mm/y)は全て根圏下に浸透して地下水に至る。ここの小麦とトウモロコシの輪作が行われている畑地において、1)化学肥料の通常量施肥区、2)1/2施肥量区、3)無施肥区、4)堆肥区、を設定して数年間同一管理をしてきた試験区があり、この4つの区画と、長年にわたって非農地で施肥も収穫も行われていない草地の5カ所で、根圏下の土壌水の全窒素(TN)濃度を土壌サンプリングによって測定し、水の根圏下への年間フラックスを乗じてTNフラックスを求める測定を行ってきた。この結果、根圏下土壌水のTN濃度(およびフラックス)は施肥のTN量にほぼ対応するものの、数年以上前の過去に大量に施肥された窒素の影響が残っており、根圏における年間の窒素収支は、根圏内の窒素蓄積量の年間の増減がフロー(インプットとアウトプット)に比べて無視できてインプットとアウトプットが釣り合うような定常状態ではないことが明らかになった。 根圏下土壌水のTN濃度(およびフラックス)を経年的な変化を継続して測定する必要があため、これまでのサンプリングした土壌から土壌水を加水抽出してTN等の水質を測定する方法に加えて、素焼き付きパイプを土中に挿入してポンプで負圧を与える構造の土壌水採取器を試したところ、約1日負圧ポンプで吸引すれば必要な土壌水を採取できることがわかった。 また、当初の計画外ではあるが、福島県の農地土壌における放射性セシウムの降雨浸透による鉛直移動速度を測定し、5-10mm/yであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の、土壌サンプリングと加水抽出水の分析による、根圏下窒素フラックスを、5つの異なる施肥農地と非農地で比較する成果は得られている。しかし、当初可能と考えた根圏の窒素収支については、窒素蓄積量がフローに比べて膨大であり、一定施肥量で数年間耕作した程度の期間では、蓄積量変化がフローに比して無視できるような定常状態とはならず、収支を正確に得ることが原理的にできないことが明らかになったのは、ネガティブな研究成果である。 降雨による窒素の浸透流出に加えて、福島県における放射性セシウムの降雨浸透に伴う移動量測定を加え、これについて極めて大きな成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
素焼き付きパイプを土中に挿入してポンプで負圧を与える構造の採水システムを本格的に導入して、1)化学肥料の通常量施肥区、2)1/2施肥量区、3)無施肥区、4)堆肥区、5)雑草地、において年間を通した根圏下への窒素流出量の年周期経変化を測定する。このシステムによる測定値のバラツキについて検討するため、各区で複数地点での採水を要する。 乾燥地(モンゴル)草地の根圏土壌水分環境と比較するために、東京田無に試験地にテンショメータと土壌水分センサーを設置し、根圏化までの水分変化の降雨応答を見る。
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