東大生態調和農学機構内の畑地及び雑草地で、施肥履歴の異なる畑地および施肥も収穫もない雑草地において、根圏下の土壌溶液のサンプリングを年間を通して行い、窒素の流出量を求めて比較した。畑地では4つの区すなわち、堆肥区(施肥量277NKg/ha)、化学肥料標準量区(240)、化学肥料半量区(120)、無施肥区)夏作としてトウモロコシ、冬作としてコムギを栽培している。雑草地は長年、施肥も収穫も行われておらず、自然状態の土地の窒素流出と収支を示すと考えられる。各区のそれぞれに2カ所ずつ、先端に素焼きカップに細いチューブを接続したパイプを約120㎝の深さに埋設し、負圧ポンプで吸引して素焼きカップ周囲の土壌溶液を採取した。2013年の12月から2週間おきに継続して行い、採取した土壌水は全窒素計にて窒素濃度測定を行った。 この結果、畑地根圏下の窒素濃度が8・9月と1・2月に濃度が高く(6~17 mg/L)、4~6月と10・11月に濃度が低い(3 mg/L以下)のは、2つの作物の窒素吸収によると思われる。特に8・9月のピークは、根圏地温が上昇して無機化が進むにも関わらず5・6月に根の窒素吸収がないために、上昇した濃度が遅れて120cm深度に達したと思われる。(濃度の下方への伝達速度は、間隙流速(=約2m/year)以下である)。 次に、T年間の窒素流出量、流出率等を求めたところ、窒素流出量は堆肥区(54.8 NKg/ha)が化学肥料標準量区(32.5)の約1.7倍、無施肥区(14.6)が雑草区(4.7)の約2倍となり、畑地では2007年以前に多くの窒素肥料が与えられ土壌蓄積量が多いためと考えられる。次に、以下の根圏窒素収支式の残差⊿S を求めたところ、、雑草区では⊿S=20 NKg/haの脱窒があると考えられるが、 畑里では⊿S が負(貯留量の減少)で、堆肥区と無施肥区で約-100 NKg/ha もの大きさとなり、過去に蓄積された土壌中の多量の有機体窒素が無機化されて流出していることがわかった。
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