研究課題/領域番号 |
23380144
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平松 和昭 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10199094)
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研究分担者 |
齋 幸治 高知大学, 自然科学系, 准教授 (30516117)
森 牧人 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60325496)
黒澤 靖 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70128114)
福田 信二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70437771)
原田 昌佳 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80325000)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 閉鎖性水域 / 沿岸浅海域 / 窒素 / リン / 富栄養 / 貧栄養 / 負荷流出モデル / 生態系モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域圏における,陸海域を統合した流域圏水環境解析モデルを構築する.まず,陸域を対象にGIS援用分布型流域負荷流出モデルを,閉鎖性内湾を対象に3次元水理学-生態系モデルをそれぞれ開発する.その際,衛星リモートセンシング技術や人工知能技術なども援用する.次に,両モデルを統合した流域圏水環境解析モデルを用い,各種の負荷削減策の実施等の水質保全対策に対するシナリオ分析を行い,水質総量規制を含む,流域圏水環境の改善のロードマップを提言する. 4年目となる平成26年度は,その基礎のなる素過程のモデリングと素過程モデルの統合化を進めた.まず,面源負荷グループでは,浄水場で河川水から分離された浄水汚泥の理化学性を分析し,この理化学性には流域条件が関与することを明らかにした.閉鎖性湖沼グループでは,まず,有機汚濁が進む貯水池を対象に,嫌気的条件下での脱窒,鉄還元,硫酸還元に伴う水質動態特性について室内実験を通じて明らかにした.また,閉鎖性水域の保全・改善対策として,水中LEDを光源とする藻類の光合成の活性化による水環境修復技術を提案した.さらに,農業用貯水池の富栄養化に起因した利水障害への対策として,局部的遮光フロートによる藻類制御技術について検討し,貯水池の水管理条件を考慮に入れた効果的な遮光管理を提言した.GIS流域解析グループでは,ベトナムにおいて標高や土地利用等の数値地図情報および気温や降水量等の水文気象データを収集し,準分布型流出解析モデルであるSWAT を感度分析に基づいてキャリブレーションし,水収支や栄養塩負荷(窒素,リン),土砂流出量について解析するとともに,水文改変指標に注目したシナリオ分析を実施し,水質汚濁要因を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では4組のグループからなる研究組織,すなわち面源負荷グループ,GIS流域解析グループ,閉鎖性湖沼グループ,閉鎖性海域グループを構成し,研究代表者がこれらを統括し,各グループの研究成果を互いに共有しつつ研究を進めることにしている.平成25年度は4グループともに,前年度に引き続き,素過程のメカニズム解明とそのモデリングを重点的に進める予定であったが,4グループともに当初計画通りの成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
陸海域を統合した流域圏水環境解析モデルを開発するため,「現在までの達成度」で述べたように,4グループからなる研究組織で研究を進める.面源負荷グループとGIS流域解析グループは連携してGIS-based流域負荷流出モデルを構築する.両グループの成果を入力として,閉鎖性湖沼グループと閉鎖性海域グループは3次元水理学-生態系モデルを開発する.その際,国内の精査海域・流域でプロトタイプモデルを開発し,海外の応用海域・流域で適用検証する.得られたモデルを統合した流域圏水環境解析モデルを用いたシナリオ分析から,水質総量規制を含む,水環境改善に向けた最適なロードマップを提言する.現時点で「研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点」は特にない.
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