研究課題/領域番号 |
23380145
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究分野 |
農業環境工学
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 大雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00333716)
|
研究分担者 |
石田 祐宣 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60292140)
|
キーワード | 果樹 / 農業生産環境 / 光合成 / 物質生産 / 微気象観測 / 二酸化炭素フラックス / 渦相関法 / リンゴ |
研究概要 |
本研究は、個体群レベル、個体レベル、個葉レベルの光合成・呼吸速度測定を、同一のリンゴ園で気象環境をモニタリングしながら統一的に実施する中で、リンゴの物質生産機能に関する有用な知見を得ることをねらいとしている。 個体群レベルの観測は、平成18年度から実施されてきたが、資金不足等から一部の測器に不具合が生じていた。平成23年度は、まず観測を完全に中断して全ての測器を実験室で入念に修理調整しつつ、借用資材の炭酸ガス・水蒸気変動計と老朽化した超音波風速温度計については本研究予算で購入・更新した。その後屋外で機器の相互検定を実施し、7月からボーエン比法での、10月から渦相関法での観測を再開した。ボーエン比法では、光合成・呼吸速度を算出する際、融雪熱量ならびに群落内貯熱量を推定の上考慮できるよう計算過程を改良したため、観測結果の信頼性が一層高まり、研究成果の一部を学会で報告した。渦相関法では、樹列間(メインタワー)に加えて樹列上(サブタワー)でも同時に観測を実施し、10~11月で主風向が樹列に概ね平行な昼間の時間帯に絞って、2地点の顕熱輸送量、潜熱輸送量ならびに対流構造を比較した。その結果、樹列上で下降して縦列間で上昇する継続時間数十秒の対流が時折見られたものの、より長い時間スケールで見ると下降気流と上昇気流の発生頻度、顕熱・潜熱輸送量のいずれにも地点間差は認められなかった。この結果は、渦相関法の観測結果がタワー設置位置に依存しないことを示唆するが、夏季の強日射条件下や主風向が異なる場合についても解析する必要がある。 個体レベルの計測は、供試樹の近傍まで電源を敷設し、観測小屋を設置するとともに、チャンバーの設計を行って必要な諸資材を購入したが、圃場にチャンバーを制作・設置して試運転するには至らなかった。 なお、個葉レベルの計測は平成24年度からの実施予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個体群レベルの研究は、既存の気象機器の故障や、新規気象測器の購入遅延などのため、観測期間が当初予定より短くなったものの、現在は順調に観測されている。個体レベルの研究は、東日本大震災の影響で10月まで予算が確約されなかったため、諸資材の購入が遅れ、チャンバーを製作できないまま積雪時期を迎えた。しかし、設計や諸資材の調達は終了しており、消雪次第、チャンバーの制作に着手できる状態にある。
|
今後の研究の推進方策 |
個体群レベルならびに個葉レベルの研究は、当初の計画どおりに推進する。個体レベルの研究は、現在当初計画より若干遅れている上、個体用チャンバーの制作は当初の想定より技術的に相当困難であることがわかった。平成24年度は技術的諸課題を解決して実用性のあるチャンバーを完成させ、予備的な実験を実施する。本格的な実験開始は、当初計画より1年遅れて平成25年度からになると見込まれる。
|