研究課題/領域番号 |
23380145
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 大雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00333716)
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研究分担者 |
石田 祐宣 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60292140)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 果樹 / 農業生産環境 / 光合成 / 物質生産 / 微気象観測 / 二酸化炭素フラックス / 渦相関法 / リンゴ |
研究概要 |
本研究は、個体群レベル、個体レベル、個葉レベルの光合成・呼吸速度測定を、同一のリンゴ園で気象環境をモニタリングしながら統一的に実施する中で、リンゴの物質生産機能に関する有用な知見を得ることをねらいとしている。 個体群の二酸化炭素フラックスは、渦相関法により樹列間(メインタワー)の高さ9mと7mならびに樹列上(サブタワー)の高さ9mの計3地点で、ボーエン比法により樹列間(メインタワー)の1地点で観測した。大気が不安定でかつ樹列に沿って風が吹く事例を選んで、渦相関法による樹列間と樹列上の観測を比較・解析したところ、二酸化炭素フラックスは樹列上においてより大きく計算され、その傾向は大気の不安定度が強いほど顕著であった。このことから、日中においては①鉛直に二酸化炭素を輸送する乱流は樹列間より樹列上で顕著に発達する、②このような対流構造の非一様性は風向に応じて観測精度に影響する、と考察した。更に、供試圃場で過去に計測した土壌呼吸速度について、地温、土壌水分との関わりを解析して学会発表した。 個体レベルの光合成速度は、5月中旬から11月中旬まで3週間おきに、それぞれ約5日間計測した。計測結果を個体群の二酸化炭素フラックスと比較することにより、草刈り実施直後の刈草からの二酸化炭素放出量に関する知見などを得つつある。また、本年は供試個体の摘果強度を昨年と大きく変えた上で、光合成速度の日中低下現象について詳しく解析した。その結果、日中低下は晴天・快晴日だけに、土壌乾燥の有無に関係なく見られ、強摘果されるとより顕著になることを見いだした。このことから、日中低下の原因として水ストレスより摘果によるシンク制限が重要であると考え、学会で発表した。 個葉レベルの光合成の測定は、個体レベルの光合成の計測に特に力を注いだこともあり、残念ながら実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個体群レベルの研究では、当初の想定を上回って3台の二酸化炭素・水蒸気変動計を利用できることになり、その観測結果を利用してリンゴ園の乱流構造に関する興味深い知見を得ることができた。また、供試圃場の土壌から放出される二酸化炭素について、過去の観測結果を解析して一定の知見を得ることができた。個体レベルの研究においても、本年は完全に計画通り実験を遂行し、日中低下現象に関する詳細な解析を行って学会発表に結びつけた。個葉レベルの実験だけは計画通りに進展していないが、最終年度に実施できる見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
個体群レベルでの研究では、昨年使用した3台の二酸化炭素・水蒸気変動計のうち、借用していた1台を返却せざるを得なくなった。そのため2台での観測となるが、それぞれメインタワーとサブタワーの高さ9mに設置して、更にデータの蓄積を図り、昨年度の研究成果を補強する。 個体レベルでの研究では、摘果強度を昨年より大幅に弱めて実験を継続する。本年が補助金交付の最終年度であるが交付が終了しても更に1年間研究を継続して、当初想定していた実験内容を完全に実施する。 個葉レベルの研究では、個体チャンバーの供試樹と同一圃場・同一品種の樹を供試して、飽和光下光合成速度の日変化、加齢変化、季節変化などを追究する。
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