研究課題/領域番号 |
23380147
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
|
研究分担者 |
牧野 義雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70376565)
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80234053)
|
キーワード | 光センシング / 分光反射スペクトル / ATP / 一般生菌数 / 豚肉 / ミオグロビン誘導体 / 回帰モデル |
研究概要 |
光センシング、すなわち、分光反射情報からのATP検出を基本にして、食肉表面に付着した生菌数を瞬時に評価できる技術開発を目的として研究を行った。 豚ロース肉のスライス片を試料とし、試料を15℃で保存して経時的に表面の分光反射スペクトルを取得した。分光反射スペクトルの取得毎に試料表面の4cm四方を綿棒の先端でふき取って(ふき取り法)、先端部のみを滅菌水に投じて撹拌した試料液を調製した。この試料液から、一般生菌数は標準平板法に準拠した方法で、また、ATPは生物発光法で測定した。分光反射スペクトルは島津製作所(株)のUV-3600を用いて、一般生菌数は日本細菌検査(株)の一般生菌数測定用の乾式フィルム培地を用いた培養法により、また、ATPは東洋ビーネット(株)のATP発光キットを用いて発光量をアトー(株)のルミネッセンサーにより測定した。 その結果、単位面積当たりのATP量の対数と単位面積当たりの一般生菌数の対数は良い相関を示し、初期の相関は低いものの、保存期間全体(72時間)にわたる決定係数は0.96であった。これにより、ATP量の変化は、保存時間と共に増殖する一般生菌数の変化と1:1に対応することが示された。 一方、反射スペクトルの2次微分値の経時変化からATPに関係すると推察される吸収波長が318nmにあり、ミオグロビン誘導体に起因すると思われる吸収波長が578nmにあることが示され、318nmと578nmにおける2次微分値を用いて(ATP量の対数)および(一般生菌数の対数)を推定する多項式回帰を行った結果、(ATP量の対数)の推定モデルではR2=0.85、RMSE=0.53、SE=0.55、(一般生菌数の対数)の推定モデルではR2=0.84、RMSE=0.89、SE=0.91となった。さらに、部分最小二乗回帰を行った結果、(ATP量の対数)および(一般生菌数の対数)のいずれの回帰モデルでもR2=0.95が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初に想定したATP量と一般生菌数との線型モデルが得られたことに加え、ATP由来と推察される吸収波長とミオグロビン誘導体に起因した吸収波長が実験的に認められ、ATP量や一般生菌数の推定に有用な波長が特定された。さらに、精度の高い推定モデルが得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
豚肉スライス片を72時間保存する過程におけるATP量や一般生菌数を推定するモテルが得られたが、本研究が狙いとする食肉加工場の衛生評価では、豚肉表面のATP量や一般生菌数が危険なレベルになったときの評価が重要になる。この観点からすると、72時間の全保存期間ではなく、初期の早い段階での推定精度を高める必要がある。今後、保存初期(36時間あるいは48時間程度)においても、必要な推定精度が得られるかどうか検討する。
|