研究課題
植物根系から土壌への有機酸等の分泌のイメージング解析に関して、平成24年度は、植物体地上部への正確で安全なC-11標識二酸化炭素トレーサの供給を可能にする「ガストレーサ投与システム」を完成させた。前年度に開発した「根箱装置」を改良し、ダイズを栽培し同装置内で根系を発達させた後、ガストレーサ投与システムによってダイズの葉にC-11標識二酸化炭素トレーサを投与する実験を行った。その結果、ダイズの根系への光合成産物の移行・分配を基部・主根・側根といった領域別に定量することが可能な動画像を得ることに成功し、さらに、根系と土壌を簡単に分離できる根箱装置の新しい機能により、植物根から土壌中へ放出された有機酸等の分布を独立した定量的画像として得ることに成功した。これは、葉で固定された炭素が根系の特定の部分から有機酸等として分泌されるまでの過程を捉えた世界で初めての実験結果である。平成25年度はこの画像データを解析し、根系各部位への炭素の配分などの情報を引き出し、論文としてまとめる予定である。一方、土壌から植物根系への物質吸収過程のイメージング解析に関して、平成24年度は、前年度に行った実験結果をとりまとめ、アブラナへのグルタチオン施用により、吸収させたカドミウムの地上部移行の抑制だけでなく、根系から培地中へのカドミウムの放出が起こるという発見と、重金属集積植物であるセダムによるカドミウムの経根吸収と地上部への移行が、施肥条件によって大きく影響を受けるという発見について、2報の論文を発表した。また、セシウム高集積性植物の一種であるオオイタドリを用いて、放射性セシウムの経根吸収のイメージング実験を行い、得られた動画像データを元に、経根吸収速度を算出することに成功した。平成25年度は、この系を発展させ、植物種や栽培条件と経根吸収能力の関係の定量的解析が可能な実験系の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で目的としていた「植物根系から根圏土壌への有機酸等の分泌」および「土壌から植物根系への物質吸収」のRIイメージングによる解析技術の実現について、前者については世界で初めて動画像データの取得に成功し、後者については2報の論文として成果発表するに至ったので、2年目として十分な達成状況にあるといえるため。
最終年度である平成25年度は、「植物根系から根圏土壌への有機酸等の分泌」「土壌から植物根系への物質吸収」の双方のテーマについて、これまでに得られたイメージングデータを解析し、土壌と作物の相互関係の解明研究を本技術が切り拓くという観点から、複数の論文発表・学会発表を行う予定である。また、放射性セシウムの経根吸収のイメージング解析についても、ガンマカメラ等の新規計測技術を応用した画像の取得を進め、開発した技術と得られた成果に関してとりまとめ、積極的に発表を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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