研究課題
基盤研究(B)
本研究では安定的にゲノムに遺伝子導入したブタiPS細胞と一過性の発現にて作成したブタiPS細胞の生物学的性質を比較する予定であった。しかし2011年3月に生じた東北・東日本大震災によって生じた長期停電によって、超低温冷凍冷蔵庫は室温にさらされ、保存していたブタ由来iPS細胞は全て死滅したことを確認した。そこで我々は再度、ブタ由来iPS細胞を樹立するために、ブタ胎児由来線維芽に遺伝子導入を行った。本年度は以下の結果を得た。1)ブタ胎児由来線維芽細胞にマウス由来の4つの転写因子(Oct3,Klf4,c-myc,Sox2)を導入し、幹細胞の形態を示す細胞株を得た。2)樹立された幹細胞はLIF(白血球分化阻害因子)およびホルスコリン依存性を示した。3)新たに樹立したブタiPS細胞はフィーダー細胞上で15世代以上安定的に継代が可能となった。4)幹細胞のマーカーであるアルカリフォスファターゼに陽性を示し、加えてブタ内在性Oct3,Sox2,Klf4遺伝子がリプログラミングによって活性化していることをRT-PCRのよって検出した。以上のことから、我々はブタ胎児由来線維芽細胞から東北・東日本大震災によって失われた人工多能性幹細胞(iPS)を再度樹立したと結論した。さらに生物学的特性の解明を進める。その後に震災によって遅延している一過性の遺伝子発現によるブタiPS細胞の樹立を行う予定である。
3: やや遅れている
2011年3月に生じた東北・東日本大震災によって、保存していた培養細胞が全て死滅した。加えて東北大学大学院農学研究科は大きく被害を受け、研究環境を整備するために多くの労力と時間を必要とした。このような環境の中で、培養細胞の実験系を再構築し、iPS細胞の実験を開始する必要があり、研究計画としてはやや遅れていると判定した。
樹立されたブタ胎児由来iPS細胞を用いて、RT-PCRおよび蛍光免疫染色によって幹細胞マーカー遺伝子の発現を検出する。加えて胚様体形成ならびにscidマウスへの移植実験を通じて、樹立したiPS細胞の分化能力を推定する。さらに一過性の発現系を用いてブタ胎児由来線維芽細胞から、ゲノムに傷をつけない方法でiPS細胞の樹立を試みる。
すべて その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Bioscience Biotechnology and Biochemistry
巻: (in press)(未定)
Oncology Report