研究課題/領域番号 |
23380159
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池内 義秀 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90168112)
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研究分担者 |
水野谷 航 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20404056)
佐藤 祐介 宇都宮大学, 農学部, 助教 (50589520)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 骨格筋 / APOBEC2 / 筋収縮 / DNA脱メチル化 / 筋分化 / 筋芽細胞 / 筋管 |
研究概要 |
平成24年度の研究計画は、in vitro レベルで APOBEC2 が DNA 脱メチル化に関与 するかを検討することである。一昨年筋芽細胞株を用いた研究から、APOBEC2 のノックダウンが筋分化マーカーの発現を抑制することが報告された (Vonica et al, Dev.Biol., 2011)。この事は、APOBEC2 が筋分化の制御に関わることを示しており、申請者らが予想している DNA 脱メチル化への関与も期待できる。一方、筋芽細胞から筋管への正常な分化にはDNA 脱メチル化が必須であり (Jost, PNAS, 1993)、APOBEC2を欠損した筋芽細胞から筋管を作製できるのか不明である。そこで、APOBEC2 欠損マウス由来の初代培養筋芽細胞を用いて、APOBEC2 欠損が筋分化に及ぼす影響を検討した。野生型および APOBEC2 欠損型マウスの後肢筋から筋芽細胞を単離し、低血清培地で分化誘導し、筋管を作製した。意外にもAPOBEC2 欠損型の筋芽細胞の方が野生型より早く筋管を形成していた。そこで、各細胞の筋分化マーカー遺伝子及びタンパク質の発現量を時系列的に定量した結果、APOBEC2 欠損型の筋芽細胞の方が野生型より早い段階で高い値を示した。筋分化マーカーであるミオシンの抗体を用いた免疫染色法を行った結果も、APOBEC2 欠損型の方が野生型よりも早くミオシン陽性の筋管を形成していた。次に正常なサルコメア構造を有した筋管を形成しているか、α-アクチニン、ミオシンの抗体を用いて免疫染色した。その結果、APOBEC2 欠損型の筋管は野生型と同様に正常なサルコメアを形成しており、培養液中で筋収縮することを確認した。APOBEC2 欠損型の培養筋管は筋収縮可能であることがわかったため、野生型と比べ DNA の総メチル化量に差があるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の「研究の目的」は、APOBEC2 が in vitro で DNA 脱メチル化に関与しているかを明らかにすることであった。しかし、 DNA 脱メチル化に関与するはずの APOBEC2 を欠損した筋管が野生型よりも早く分化したため、原因の追求と正常な筋管であるかの検討を行っており、予想外に時間が経過してしまった。今後は、交付申請書に記載した通り、DNA の総メチル化量等を早急に測定し、計画に従い研究を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、APOBEC2 欠損マウス由来の筋芽細胞は野生型よりも早く分化することが明らかになった。一方で、APOBEC2 欠損型の培養筋管は正常なサルコメア構造を有しており、筋収縮することも確認できた。今後は両筋管中の DNA 総メチル化量を測定し、in vitro で筋収縮による APOBEC2 を介した DNA 脱メチル化の可能性を探る。最終年度に予定している、マウス生体組織を用いた DNA 脱メチル化の検討については、既に申請者らは電気刺激および流水プール等の in vivo の実験系を確立しているため、スムーズな研究の遂行が可能である。マイクロアレイについては外部委託で行うため、研究が滞ることはない。
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