研究課題/領域番号 |
23380162
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
橋爪 一善 岩手大学, 農学部, 教授 (10355737)
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研究分担者 |
木崎 景一郎 岩手大学, 農学部, 准教授 (40337994)
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キーワード | 細胞・組織 / 遺伝子 / ゲノム / マイクロアレイ / 発生・分化 |
研究概要 |
ウシの胎盤機能の主導細胞である栄養膜細胞の分化機構と機能を明らかにするため、既に確立したinvitroウシ栄養膜細胞(BT)系を用いて、栄養膜細胞の特性並びに細胞分化に関わる分子を検索した。 現有する13系のBT細胞をマイクロアレイ解析により遺伝子発現パターンを比較検証、網羅的遺伝子発現動態の主成分分析から細胞系は3群に大別された。その分類は階層型クラスタリングでの分類と一致した。しかしながら、これまでウシ栄養膜細胞に特異的に発現することが知られているインターフェロン・タウ(IFNT)、胎盤性ラクトジェン(CSH1)、プロラクチン関連タンパク質(PRP)、妊娠関連糖タンパク質(PAG)、栄養膜クニンツ領域タンパク質(TKDP)並びに転写因子(CDX2、NANOG)の発現動態からの分類は上記2方法による解析分類と一致しなかった。CDX2、CSH1、IFNTおよびアクチビンに関連する遺伝子の発現は、13の細胞系で一致しており、確立した細胞系の共通した特性といえる。 網羅的遺伝子解析および栄養膜細胞特異的な遺伝子の発現動態を、生体由来妊娠17日、20日および23日の栄養膜細胞と比較すると、確立された細胞系は妊娠20日の栄養膜細胞での動態と一致した。これらの結果は、確立したBT系は、ウシの着床時期の栄養膜細胞の特性を有していることを示唆している。 BT細胞系を特性に応じ分類、分取することが本年度の他の目標であり、トリプシン、コラゲナーゼなどを用いて細胞分離を試み、これら酵素による細胞の単離は体細胞由来の線維芽細胞などと比較して生存性を有したまま分離することは、困難とされてきたが、約60%の細胞の単離が可能な方法を見いだした。本手法は、次年度以降の密度勾配法による細胞特性による分取法の確立に大きく寄与すると考えられる。 また、次年度以降に実施予定の培養栄養膜細胞の分化誘導手法を検証し、マトリジェルによる誘導が確実で、これまでの厚いコラーゲンゲル上培養による分化誘導よりも効果的であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した各種細胞の遺伝子の網羅的解析を完了、細胞分取の基盤となる細胞の単離法を確立、また、次年度以降に実施予定の細胞分化誘導方法を確認したことから、研究の進捗は順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は分離・分取した細胞の特性および特異分子の発現制御機構を検証する。また、多核化誘導と誘導後の遺伝子発現動態を明らかにすることから、最終年度のウシ栄養膜細胞の多核化現象が着床機構に果たす役割の解明に繋げてゆく。
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