研究課題/領域番号 |
23380164
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南 直治郎 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30212236)
|
研究分担者 |
松本 和也 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (20298938)
塚本 智史 (独)放射線医学総合研究所, 先端動物実験室, 技術職員 (80510693)
|
キーワード | マウス / 初期胚 / クロマチンリモデリング / Chd1 / Oct4 / siRNA |
研究概要 |
本研究では受精後の胚における転写の活性化に関わる要因を解明する目的で、ヒストンH4のメチル化を認識し、転写活性を正に制御するクロマチンリモデリング因子Chd1に着目した。Chd1の役割を解析するために、受精後1細胞期胚の細胞質にChd1を標的とするsiRNAを顕微注入することで、Chd1ノックダウン胚を作製した。ノックダウン胚では受精後から5.5日後まで形態的な異常は見られず、胚盤胞期胚までの発生率、脱出胚盤胞の率にも影響はなかった。当初はChd1の抑制によってゲノムの活性化が抑制されて、発生が停止することを予測したが、予測どおりの結果は得られなかった。しかしながら、Chd1を抑制した胚においては、多能性のマーカーであるOct4の発現が抑制されていることが明らかになった。Chd1抑制胚においてはOct4の発現が急激に増加する4細胞期および8細胞期において、Oct4の発現がそれぞれ1/3、1/15程度まで抑制されていた。また、胚盤胞期胚においてOct4とCdx2のタンパク質局在を免疫蛍光染色によって解析したところ、それぞれのタンパク質の局在に変化はなかったものの、タンパク質量は対照区と比較して有意に減少した。またChd1ノックダウン胚はICM由来のコロニー形成能力が対照区(72.4±9.8%)と比較して有意に低いことが示された(27.8±12.9%)。この結果はHmgpiを抑制した初期胚での結果と一致することから、Chd1ノックダウン胚でHmgpiの遺伝子解析を行ったところ、Hmgpiが2細胞期から抑制されていることが確認でされた。 Hmgpiは桑実期胚以降でOct4とCdx2の発現調節を行っていることからマウス初期胚においてはChd1がOct4の発現を直接的および間接的に制御していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の採択が11月と遅れたため、研究の開始にやや遅れが出たが、その後順調に進展した。本年度はこれまでにほ乳動物の卵母細胞や受精卵ではその機能がまったく解析されていなかったクロマチンリモデリング因子であるChd1に着目して研究を行った。Chd1はヒストンH3の4番目のリジンのトリメチルかを認識し、転写をポジティブに制御する因子として知られているが、この因子を抑制することによって卵母細胞の成熟と受精卵の着床前の発生に影響が出ることが明らかとなり、受精前後におけるエピジェネティックな修飾が重要な機能を持っていることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は受精後に起こる胚性ゲノムの活性化時期より前に発現を開始するヒストンメチル化酵素やクロマチンリモデリング因子に着目し、ゲノムの活性化を制御するエピジェネティックな修飾に関する現象について解析する。
|