研究課題/領域番号 |
23380167
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (30175228)
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研究分担者 |
葛西 孫三郎 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (60152617)
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70295210)
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キーワード | 凍結保存 / 卵子 / 細胞内氷晶形成 / ミトコンドリア / アクアポリン / MPTP |
研究概要 |
哺乳動物卵子の凍結保存は実用的なレベルに達していない。凍結保存後に卵子が死滅する主な原因は、凍結融解過程での細胞内氷晶形成である。ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜に覆われ、内膜の膜透過性が極めて低いことから内部に氷晶が形成されやすいと考えられる。そこで、ミトコンドリア内膜の膜透過性を向上させることによって、卵子の細胞内氷晶形成が抑制され、耐凍性が向上するかどうかをしらべた。まず、ミトコンドリア内膜で発現する可能性がある内在性水・耐凍剤チャンネル(AQP9)の卵子内での発現の向上と、少:量の外来性AQP9の細胞質内での発現を試み、さらにガラス化凍結後の生存性をしらべた。その結果、卵子の凍結後の生存性が向上し、耐凍性も向上することがわかった。卵子内でのAQP9の発現が耐凍性向上に関与していることを確認するために、内在性AQP9の発現を抑制したマウス桑実胚を作製し、ガラス化凍結後の生存性をしらべた。その結果、桑実胚の生存性は大きく低下し、その原因が細胞内氷晶形成によると推察された。したがって、卵子のミトコンドリア内でのAQP9の発現が、卵子内での氷晶形成を抑制して耐凍性を向上させると考えられた。次に、ミトコンドリア内膜で発現し、開口する・と水と耐凍剤を透過すると考えられるmitochondrial permeability transitionpore (MPTP)に着目し、マウス卵子をMPTP開口剤である酸化メチルヒ素(PAO)で処理した後にガラス化凍結し、融解後の生存性をしらべた。、その結果、PAOで処理した卵子ではミトコンドリア内膜の透過性が向上し、ガラス化凍結後の細胞内氷晶形成が抑制され、融解直後の生存性も向上した。これらの結果から、ミトコンドリア内膜の膜透過性を向上させることによって、卵子の細胞内氷晶形成が抑制され、耐凍性が向上することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、ミトコンドリア内膜の膜透過性を向上させることによって、卵子の細胞内氷晶形成を抑制し、耐凍性を向上させることができるという我々の仮説を証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
従来の平成24年度以降の計画通り、マウス卵子の内在性AQPを安定して誘導できる条件を検索する。また、卵子がアポトーシスを起こさない程度にMPTPが部分開口させる条件を検索する。そして、内在性AQPを誘導、あるいはMPTPを部分開口させた卵子を体外受精し、正常な受精能と発生能を維持しているかどうかを明らかにする。 そして、実際にマウス卵子のガラス化凍結を試みる。
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